6月の植物

ハンゲショウ Saururus chinensis (Lour.) Baill. / ドクダミ科

  • ハンゲショウ
  • 花の拡大

ハンゲショウは、本州以南、朝鮮、中国、ベトナム、フィリピン、インドに分布する多年草。湿地や水辺に生えます。高さは50~100㎝、先のとがった卵型の葉を互い違いにつけます。
花は6~8月で茎の上部から多数の花をつけた花穂を出します。花穂に近い上部の葉の数枚は花の時期に葉の下半分が白くなります。花穂は白色~クリーム色で最初は垂れ下がっていますが、下から上へ咲いていくうちに上向きになります。一つの小さな花は大きさ2㎜ほどで、6~7本のおしべ、中央にめしべがあり、めしべの先端は3~5つに裂けています。花びらはなく、花の付け根に苞(ほう)があります。
漢字では「半夏生」、別名は「片白草(かたしろぐさ)」です。夏至から11日目を半夏(はんげ)と言いその頃に花が咲くことや葉の様子が名前の由来となっています。

2023.6

ネムノキ Albizia julibrissin Durazz / マメ科

  • ネムノキの花
  • 開き始めた花の集まり

本州以南、台湾、中国、朝鮮、東南アジアに広く分布する落葉高木。林縁、原野などの日当たりがよく湿った所に生育し、高さ10m以上になります。長さ1~1.7㎝、幅4~6㎜の小葉と呼ばれる小さい葉が15~30対集まり羽片をつくり、羽片が7~12対で一つの葉を構成しています。
暗くなると葉は垂れ下がり、小葉が合わさって閉じるので眠ったように見えます。花は6~7月、ピンク色のふさふさが円錐状に開きますが、これは小さな花10~20個が球状に集まったものです。ふさふさの大部分はおしべで一つの小花に10本以上、めしべは1本です。
花びらは黄緑色で花の根元に小さくあり、筒状で先が5つに裂けています。その下にがくもあります。おしべはカップ麺のごとく格納されていて一晩のうちにまっすぐに伸びるようです。ほんのりいい香りもあります。手に届く位置で咲いていますので枝を寄せてぜひ香りを感じてみてください。

2022.6

ヤナギイチゴ Debregeasia orientalis / イラクサ科

  • ヤナギイチゴ
  • (左)ヤナギイチゴの雄花    (右)ヤナギイチゴの雌花

本州以南、台湾、中国に生育する落葉低木。高さ2~4m、ヤナギのような葉を持ち、イチゴのような果実をつけることからこの名がついています。葉は細長く周りには細かいギザギザがあり、裏は綿毛状の毛があります。雌雄異株と言われますが、観察園にあるものは雄花雌花どちらもついているものが多いです。花は4月、ごく小さく、地味で目立ちません。雄花はおしべ4本、花びら4枚の小花がいくつか集まり、雌花は花びらが互いにくっつき子房の周りを囲んでいます。柱頭が白くほうき状に見えます。果実のオレンジ色の部分は花びらの部分が多汁質になったもので、イチゴのように見える粒々の一つが雌花一つです。果実は直径7mmほど。食用とありますが、おいしいかどうかは人それぞれでしょう。

2021.6

ハルウコン Crcuma aromatica / ショウガ科

  • ハルウコン
  • ハルウコンの根茎

インド原産の大型薬用植物。キョウオウとも呼ばれます。地下に根茎があり、地上に出ているのは葉です。茎はほどんどありません。葉の高さは90~140㎝ほどになり、裏には毛があります。寒さには弱く冬になると地上部は枯れます。4~6月に再び葉が出てくるのと同時に花を咲かせます。緑やピンク色の部分は苞(ほう)といい葉が変化したもので花を守る役目があります。黄色いものが花で下から順に咲いていきます。薬用に利用されるのは根茎で中は淡黄色です。カレーの原料に使われるのは秋ウコンと呼ばれる別種です。根茎はカレー粉のような濃い黄色、花の時期も7~9月と異なります。

2021.6

モクゲンジ Koelreuteria paniculata Laxm. / ムクロジ科

  • モクゲンジの花
  • モクゲンジの果実

本州の日本海側、中国、朝鮮に生育する落葉高木で、日本のものは野生なのか、中国から持ち込まれて広がったものなのかははっきりしていません。お寺などに植えられています。6月から7月にかけて、枝先に黄色の小花を円すい状にたくさんつけます。一つの花は直径1㎝ほどで、花が咲きすすむにつれて付け根のふくらみは赤くなります。雄しべにはたくさんの毛が生えています。その後、果皮が3枚合わさった、先のとがった風船のような果実ができます。秋には茶色くなり、中には直径7mmくらいの真っ黒で丸い種子があります。数珠やネックレスなどに利用されたようです。中国では染料としての利用もあり、花からは黄色、葉からは青色が採れます。

高いところで咲いているのでなかなか気がつきませんが、樹冠が黄色いっぱいになり見ごたえがあります。サクラの花が散るがごとくはらはらと花が落ちる様子も美しいです。

2015.6

イトラン Yucca flaccida Haw. / リュウゼツラン科

  • イトランの花
  • イトランの葉から出る糸(矢印)

アメリカ南部が原産の常緑の低木。耐寒性があるので庭園に利用されています。ユッカ属の植物は観葉植物として鉢植えでもよく利用されます。本種は幹が極めて短く、地際から放射状に葉を出しているように見えます。長さ30~50㎝の長い剣のような葉のふちからは、ねじれた繊維が糸状に出ており、これが名前の由来です。葉はやや白く粉がかかったような色をしていて、先はとがり痛いです。6月に花茎を立ち上げ、1~1.5mほどになり、白い釣鐘状の花を円すい状につけます。

ユッカ属の仲間はユッカ蛾という蛾が花粉の媒介を行うことで果実を作ります。花の中にユッカ蛾の産卵場所と幼虫の生育場所を与える代わりに受粉をしてもらっているのです。残念ながら日本にはユッカ蛾がいないのでこの様子を見ることはできません。ふやす時は株分けしたり、挿し木を行います。

2015.6

ザクロ Punica granatum L. / ザクロ科

  • ザクロの花
  • 花の断面 雌しべの根元にはたくさんの胚珠が見えます

小アジア、アフガニスタン、ヒマラヤにかけて分布しています。欧米では最も古く栽培が始まった果実の一つで、ユダヤの王ソロモンは王位の象徴としてこの形の王冠を踏襲するようになったといいます。
花は6月ごろに枝の先につきます。がくは固く、革のような質感があり子房とくっついています。花びらは橙紅色で6~8枚。薄くやわらかでザクロの果実の固い質感とは対照的です。中には1本の雌しべとたくさんの雄しべがあります。秋に球形の果実ができ、熟すと果皮が裂けます。西洋ではジュースやシロップ、生食とよく利用されます。日本では観賞用樹木としての価値の方が高かったようで、果実の利用は副次的です。

2013.6

クリ Castanea crenata Siebold et Zucc. / ブナ科

  • クリの花(雄花) クリの花粉は昆虫によって運ばれます
  • クリの花(雌花・矢印部分) 3つの雌花が総苞(そうほう)に包まれています

日本と朝鮮南部原産の落葉高木です。見た目は違いますが、どんぐりと同じ仲間で、どんぐりの帽子に当たるところがクリではイガとなります。日本では縄文時代の遺跡からクリが発掘され、縄文人がクリを栽培し、食料としていることが分かっています。より大きな実がとれるよう、病害虫に抵抗性を持った、いろいろな栽培品種があります。
クリの雄花はクリーム色の小さな花が集まってひも状となり、立ち上がるようにして咲きます。強い香りがあり、花が咲けば香りでわかるほどです。雌花は雄花の集まりの基部に1,2個ずつつき、中には3つの子房を持っています。果実は秋になると熟して自然に裂開します。材は堅くて腐りにくいので、線路のまくら木や建物の土台や柱、家具などに利用されています。

2013.6

ウツギ Deutzia crenata /

  • ウツギの花
  • ウツギの花粉

ウツギの仲間は約50種あり、幹は中空であることからウツギ「空木」と名付けられました。葉や若い枝には星型をした毛(星状毛)が生えているのが特長です。
5枚の花弁を持った白い花を房状につけます。八重咲きや花弁が薄紅色をしたものもあります。
生命力が強く、刈り込みにも耐えるので敷地の境界として植えられました。また、材質はとても硬いので木釘としてタンスや高級な細工物に利用されています。

2010.6

アミメアリ Pristomyrmex punctatus / アリ科

  • アミメアリ
  • アミメアリの頭部

体長2.5mm、体色は褐色から赤褐色です。日本ではごく普通に見られるアリです。
頭部と胸部には荒い網目模様があることからこの名前が付けられました。電子顕微鏡写真では網目状の起伏がよく分かります。触覚の付け根が眼のように見えますが、本当の眼は触覚の後ろにあります。
女王アリを持たず、働きアリが産卵して働きアリを生産することで巣を維持しています。石の下などに野営の巣を作り移住しながら生活しています。

2010.6

ウツギ Deutzia crenata /

  • ウツギの花
  • ウツギの星状毛

植物にも毛が生えています。観察園にあるウツギやグミの葉の表面を手でなでてみると、ガサガサしています。これは、葉の表面のあるごく細かな毛のためです。
ウツギの葉を電子顕微鏡でのぞいてみると、まるでヒトデのような毛(星状毛)が観察されます。

2009.6

ムラサキツユクサ Tradescantia ohiensis / ツユクサ科

  • ムラサキツユクサの花

北米原産の草で、日本には明治初期に入ったとされています。青紫の花を楽しむため植えられるほか、生物の実験につかわれます。
生物の実験では、雄しべの毛の細胞にある、原形質といわれる部分が流動するようすを観察します。雄しべの毛は、細胞が一列に並んでいるので細胞同士が重ならないこと、また、うっすら紫に染まっていることから、細胞の中身が観察しやすいのです。

2008.6

ネズミモチ Ligustrum japonicum / モクセイ科

  • ネズミモチの花
  • ネズミモチの葉の裏側

関東南部から沖縄まで、また、朝鮮半島南部に生える木です。
黒っぽい果実がネズミの糞に似ていること、枝や葉がモチノキに似ていることからこの名前がつきました。よく植栽されているトウネズミモチとは、葉を陽にかざしても脈が透けないことから区別できます。
トウネズミモチは、これにつくカイガラムシから白蝋を採るため植えられるそうです。
紫の表皮細胞の写真は、トウネズミモチの葉のものです。

2008.6

ブラシノキ Callistemon speciosus / フトモモ科

  • ブラシノキの花
  • ブラシノキの葉の裏側

オーストラリア原産で、花がボトルを洗うブラシのように見えるのでこの名前が付けられています。赤く目立っているのは雄しべです。果実は枝の根元に何年も付いていて、まるで虫の卵のようにも見えます。山火事や極度の乾燥下で裂果して細かな種が飛び散ります。
紫の写真は、葉の表皮細胞の一部を染色したものです。

2007.6

アメリカアサ Apocynum cannabinum / キョウチクトウ科

  • アメリカアサの花
  • アメリカアサの根

観察園掲示板のすぐ左手に生えているのがアメリカアサです。
アメリカに分布している低木で、日本では冬になると地上部は枯れてしまいます。細長いさや状の果実をつけるらしいですが、観察園での果実の確認はまだありません。
根を日干しにしたものをアメリカアサ根といい、薬用として利用されています。心臓疾患の治療に使われる強心薬の製造原料として用いられています。

2007.6

ドクダミ Houttuynia cordata / ドクダミ科

  • ドクダミの花
  • ドクダミの花粉

独特な匂いのするドクダミもすずしげな白い花を咲かせます。
日本では「十薬」とも言われ、古くから民間薬として重宝されていますが、ベトナムでは、香草としてごく普通に食べます。

2006.6

ブラシノキ Callistemon speciosus / フトモモ科

  • ブラシノキの花
  • ブラシノキの実(左)ブラシノキの花粉(右)

花は本当に試験管などを洗うブラシのようです。
「実」を良く見ると、何年も前の実まで、木に付いたままになっています。山火事などで枝が枯れて、初めて実の中の種子が飛び散ります。子孫を絶やさぬ(増やす)工夫です。

2006.6