12月の植物

シャリンバイ Rhaphiolepis indica (L.) Lindl. var. umbellata (Thunb.) H.Ohashi / バラ科

  • シャリンバイの果実・果実の断面
  • シャシンバイの花(5月)

宮城、山形県以西の主として海岸に生える常緑低木。朝鮮、台湾、中国、フィリピン、ボルネオにも分布します。高さは1~4m、葉は革のような質感で互い違いに出ます。ふちには浅くギザギザが出ることもあります。裏面は淡緑色で網目状に葉脈が広がっています。枝先の葉が付く間隔は狭く、枝が伸びると車輪状に出ているように見えること、春に咲く花がウメに似ていることからこの名が付いているようです。
花は4~5月で円錐状にまとまって付きます。一つの花の直径は1~1.5㎝ほど、花びらは白色で5枚です。栽培種にはピンクがかった色もあるようです。果実は直径10~12㎜の球形で秋から冬にかけて黒紫色に熟します。やや白っぽく粉をふき、一見ブルーベリーのようにも見えますが、中はほとんどが種子で、中は大きな子葉がほとんどで食べられません。乾燥や大気汚染に強く、また刈り込みにも強いので庭木や公園木、道路脇に植えられます。また樹皮や根、材はタンニンを多く含むので染色に用いられます。大島紬はシャリンバイを煮出した汁によって染められています。

2023.12

アオノクマタケラン Alpinia intermedia Gagnep. / ショウガ科

  • アオノクマタケランの果実
  • アオノクマタケランの花

本州、四国、九州、南西諸島、中国、台湾、フィリピンに分布する常緑の多年草。
暖地の湿った林下に生えます。草丈は1~1.5mほどありますが、地上に見えている茎に見える部分は葉っぱが変化したもので、偽茎(ぎけい)と呼ばれています。本当の茎は土の中です。葉らしく見える部分は先のとがった楕円形で毛はなく光沢があります。
花は夏、上部に直立して2㎝ほどの花を総状につけます。雄しべと雌しべが弧を描くように垂れているのが可愛らしく、花びらのピンクのラインも鮮やかできれいです。秋から冬にかけて直径1㎝ほどの赤い果実ができます。緑、黄色、赤色と変化していく色とりどりの果実は花の少ない冬の観察園に彩りを添えてくれています。寒さに弱いので霜が降りそうになったら温室へと引越しします。

2022.12

シロヤマブキ Rhodotypos scandens (Thunb.) Makino / バラ科

  • シロヤマブキの果実
  • シロヤマブキの花

朝鮮半島、中国に分布する落葉小高木。高さは2ⅿほどで本州にもまれに自生します。種子や挿し木などで簡単にふえ、市販もされていますが自生地はごくわずかで国の絶滅危惧種に指定されています。卵型で先のとがった葉の周りには細かな切れ込みがあり、向かい合ってついています。若い緑色の枝や芽吹き始めの葉には白い毛がありますが、葉の裏と葉柄を残してじきになくなります。枝先が緩やかにカーブし、しだれたような樹形で、先に一つずつ花がつきます。
開花は4~5月です。4枚の白色の花びらを持ち、大きさは直径4センチほどです。
花の後つやのある黒い果実が4つでき、葉が黄色く色づき落葉した後も長く残ります。シロヤマブキは1属1種で、黄色い花が咲くヤマブキとは全く別の種です。ヤマブキの葉は互い違いにつき、また花びらは5枚であることが見分けるポイントです。ヤマブキの黄白色の花びらのものも存在し、こちらはシロバナヤマブキと呼ぶそうです。名前だけ聞くとややこしいですね。

2021.12

カリン Pseudocydonia sinensis (Thouin) C.K.Schneid. / バラ科

  • カリンの果実
  • カリンの幹(左)と花(右)

国原産の落葉高木で、庭木として利用されます。名前は材の木目がマメ科のカリンに似ていることによるそうで、床柱、家具、彫刻などに利用されます。樹皮は滑らかで、大きくなるとまだらにはげて雲紋状になります。秋から冬にかけて黄色く目立つ果実はロウ物質が分泌されて光沢があります。甘くてよい香りもあり、中国では部屋で芳香を楽しんだり、衣服に香りをつけて利用することもあったそうです。果実は硬くてそのままでは食べられません。砂糖やはちみつに漬けたりお酒にして利用します。咳止めに効能があります。冬深まると葉も果実も落ちてしまいますが、4月ごろには葉とともに濃桃色の花が咲きます。たくさんは咲かないのでサクラのような豪華さはありませんがふんわりとした花びらが可憐です。庭に1本植えておけば利用価値の高い樹木です。

2016.12

ヒラタケ Pleurotus ostreatus / ヒラタケ科

  • ヒラタケ
  • 裏から見た様子

晩秋から早春にかけて発生するきのこで、色々な広葉樹の倒木上や枯木などに発生します。寒くなってから出るので別名「寒茸」ともいいます。人工栽培もされていて「シメジ」の名で売られているのは本種であることもあります。最初はまんじゅう形で、傘が開くにつれて半円状になり、大きいものは20㎝にもなることがあるそうです。柄は短いか見られないこともあります。折り重なるようにたくさん発生することもあり、一度にたくさん採ることが可能なきのこです。観察園では最初枯れそうなオニグルミの幹から発生し、昨年からは切り倒したヤナギの丸太からでています。時に街路樹などからも発生し、身近なきのこと言えますが、専門家に確かめてもらった確実なものだけを食べるようにしましょう。

2016.12

マンリョウ Ardisia crenata Sims / サクラソウ科

  • マンリョウ
  • マンリョウの花

暖帯、亜熱帯に生える常緑小低木。林の中のあまり日の当たらないところに生えています。冬に真っ赤に熟す果実が美しいことと、「万両」という名前から縁起物としてお正月に飾ったりします。葉は枝の上方に集まり、互い違いに出ます。葉は厚ぼったくて毛がなく、てかてかです。周りは波打つような丸いぎざぎざとなり、谷間には腺点があります。

花は6,7月ごろ、上部の枝の先端に房状にうつむいてひっそりと咲きます。白い花びらは5つに裂けてそり返り、中央に5本の雄しべと1本の雌しべがあります。花のあと、直径6mmほどの赤い果実ができ、次の花が咲くくらいまで長く枝に残っています。

江戸時代には園芸植物としてもてはやされ、色々な品種が作られました。白い実の個体が観察園内でも見られます。

2015.12

フユノハナワラビ Botrychium ternatum (Thunb.) Sw. / ハナヤスリ科

  • フユノハナワラビ
  • 胞子のうの拡大

日本中の原野や山地の向陽地に生えるシダ植物。普通シダというと、葉の裏に細かい胞子のつぶつぶがたくさんついている葉を想像しますが、本種は葉と胞子が別々につきます。

夏の間は地上部は枯れてなくなり、夏の終わりごろになると細かく切れ込んだ葉を1枚だけ出します。その後、葉の地際近くから枝分かれして胞子葉を立ち上げます。葉にも胞子葉にも毛はありません。高さは15~25cmで、胞子葉の先端は枝分かれして、直径1mmほどの球形の胞子のうがたくさんつきます。冬にかけて胞子が成熟し、茶色くなった胞子のうが2つに割れて白い胞子が風に乗って散布されます。

大学内では観察園のほかにもわずかに生育が確認されています。

2015.12

ラクウショウ Taxodium distichum (L.) Rich. / ヒノキ科

  • ラクウショウ
  • ラクウショウの球果(左)と花(右)

北米の沼沢地や湖畔の湿地に生育しています。漢字では「落羽松」と書きます。以前はスギ科でしたが、新しい分類体系でヒノキ科になりました。落葉樹で秋には茶色く色づき葉を落としてしまいます。水の多い沼地でも生育できるのは、「膝根(しつこん)」とよばれる呼吸根を出すことができるためで、沼地のラクウショウの株の周りには膝根がにょきにょきと飛び出しています。観察園では乾いているのか、パッと見てわかるほど膝根は発達しません。でもこぶのような小さな膝根は歩くと感触で感じることができ、幹から10m位離れたところにもあるのでかなり広範囲に根が広がっていることがうかがえます。メタセコイアと似ていますが、ラクウショウは葉が向かい合ってつき、果実は直径2.5㎝位の滑らかな球形です。地面に落ちるとばらばらになります。メタセコイアの葉は互い違いにつき、果実は2㎝位の楕円形なので見分けることができます。

2013.12

ヤブコウジ Ardisia japonica (Thunb.) Blume / ヤブコウジ科

  • ヤブコウジ
  • センリョウ(左)・マンリョウ(右)

本州以南の林の中に生える常緑低木。かなり暗い林内でも生育できるので林の中でよくみられる植物です。高さ15㎝程度の小さな木で、あまり目立ちませんが、根でふえることができるので時に群生していることもあります。庭木や盆栽にもされます。頂上に葉を4,5枚つけ、葉の陰に隠れるようにして6~7月に白色の花を下向きに咲かせます。花はヤブコウジ自体が小さいこともあってあまり目立ちませんが、冬に赤く実る果実は少し目線を低くすれば赤く目立ちます。

ヤブコウジは別名「十両」といいます。お正月によく使われるセンリョウは「千両」、ほかにもマンリョウ「万両」、カラタチバナ「百両」、アリドオシ「一両」があります。これは実の大きさや数から名前が与えられているようです。観察園にはセンリョウとマンリョウがあります。

2013.12

カミヤツデ Tetrapanax papyriferus (Hook.) K.Koch / ウコギ科

  • 姿はヤツデに似る(左)カミヤツデの花(右)
  • 葉の裏は毛が密生

中国南部や台湾に野生する低木。日本では暖地で、観賞用に栽培されることがあります。姿や葉はヤツデに似ています。カミヤツデもヤツデと同じく本来は常緑樹ですが、日本の寒さでは、カミヤツデはヤツデとちがって葉を落として地上部を枯らしていまします。ヤツデと異なり、葉の裏面に淡褐色の毛が生えます。若い茎には髄があり、これは昔は通草紙(つうそうし)と呼ばれる紙にされました。通草紙は、造花の材料や書画の紙として用いられていましたが、今ではプラスチックなどに取って代わられ、使われることは少なくなりました。

2012.12

ヒイラギ Osmanthus heterophyllus / モクセイ科

  • ヒイラギの花
  • ヒイラギの花粉

暖かい林に自生し、高さ10mにもなる常緑高木です。花は葉の付け根に固まって咲き、よい香りがあります。

ヒイラギの葉は大きく切れ込み、葉先にはとげがあることから、節分の時には邪気の侵入を防ぐお守りとして枝葉を戸口にさしておく風習があります。しかし、枝先の葉や老木ではとげなしの丸い葉っぱになってしまい、別の木のようにも見えます。


クリスマスの時に見かけるヒイラギと赤い実は「ヒイラギモチ(モチノキ科)」という全く別種の植物です。ヒイラギの実は初夏に実り、黒紫色で、1.5㎝ほどの楕円形です。

2010.12

ワタフキカイガラムシ Icerya purchasi / ワタフキカイガラムシ科

  • ワタフキカイガラムシと卵のう
  • ロウ物質の拡大

イセリアカイガラムシとも呼ばれます。オーストラリア原産で、明治40年代に苗木について日本に侵入し各地に広まりました。白い綿の上の、オレンジ色の部分がメスの虫です。
成熟すると白い綿状のロウ物質におおわれた卵のう(卵の塊)を形成します。自分の体より大きい卵のうのために体はそり返り、メスの足は卵のうに隠れてしまって見えません。

写真は白いロウ物質を拡大したものです。細かくコイルすることで空気を含み、卵を守る毛布のような役割をしているのでしょうか。

2010.12

ビワ Eriobotrya japonica / バラ科

  • ビワの花
  • ビワの葉の表皮細胞

日本の暖かい地方には野生の木もあるといわれていますが、売られている大きい実のビワは、中国から来た品種です。
冬、枝先に白い花を咲かせます。果実が食べられるほか、葉が咳止めなどに使われます。葉を煎じた汁を風呂に入れると、あせもに効くといわれています。
紫の写真は葉の裏側の表皮を染めたものです。葉の裏には、褐色の綿のような毛がたくさん生えています。

2008.12

ジュズダマ Coix lachryma-jobi / イネ科

  • ジュズダマ

中国や東南アジアに広く見られる大型の草で、日本では栽培されるか、栽培品が逃げて雑草となったものが見られます。
果実を包む苞(ほう)と呼ばれる部分が硬くなり、「数珠玉(じゅずだま)」となります。
つややかで硬い玉は東南アジアなどで飾りとして使われます。タイの北西部では灰色や褐色の玉、長細い玉や丸い玉など、さまざまなジュズダマが栽培され、ビーズのように使われています。

2008.12

サザンカ Camellia sasanqua / ツバキ科

  • サザンカの花
  • サザンカの葉の表皮細胞

日本に自生する常緑小高木で、江戸時代前半から盛んに園芸品種が作り出され、現在でも300種ほどが残っています。
愛知県の稲沢市は園芸品種を多く持ち、栽培も多い地域の一つです。花の少なくなってきた秋から咲き始め、色は白、桃、紅、ぼかしの入ったものなどさまざまです。種子からはツバキと同様油を絞ることができます。
紫の写真は葉の表皮細胞の一部を染色したものです。

2007.12

カミヤツデ Tetrapanax papyrifer / ウコギ科

  • カミヤツデの若葉
  • カミヤツデの花

台湾、中国南部に分布しています。温暖な地域では茎の直径が10cmにもなることがあるそうですが、観察園では冬には葉を落として地上部は枯れるのでそれほど大きくはなりません。開花も数年に一度です。
ヤツデと似ていますが、若い葉には裏表ともに毛が密生しています。幹からとれる髄で作った紙を通草紙(つうそうし)といい、造花の材料や短冊などに使われています。

2007.12

サザンカ Camellia sasanqua / ツバキ科

  • サザンカの花
  • サザンカの花粉

毎日飲んでいるチャ(お茶)と同じツバキ科に属します。
サザンカやツバキは、交配によって園芸品種がたくさんあります。花の少ない冬ににぎやかに咲いてくれます。

2006.12

ビワ Eriobotrya japonica / バラ科

  • ビワの花
  • ビワの花粉

サクラやリンゴ、ナシと同じバラ科に属します。
開花は晩秋から冬までとても長いのですが、高いところに咲いているためか、なかなか気づきません。初夏の収穫が楽しみです。

2006.12