8月の植物

エンジュ Styphnolobium japonicum (L.) Schott / マメ科

  • エンジュ
  • エンジュの果実

中国原産の落葉高木で、20m以上にもなります。一つの葉は卵型で先のとがった小さな葉を頂上は一枚だけ、その下は鳥の羽根状に6~7対つけ、全体の長さは15~25㎝です。葉の表は濃い緑色で無毛、裏は白く毛があることもあります。花は7~8月、明るいクリーム色の蝶型の花をたくさんつけますが、少しずつ咲いては散っていくので満開にはなりません。落ちた花は黄色みが強くなります。果実はじゅず状の豆果ではじめは緑色、だんだん透明感を帯び中の種子が見えるようになります。日本には薬用として入ってきており、若いつぼみを干したものは「槐花(かいか)」と呼ばれ薬用に、果実は石鹸の代用とされます。材は堅く建築材や細工物に利用されます。

2021.8

カリガネソウ Tripora divaricate (Maxim.) P.D.Cantino / シソ科

  • カリガネソウ
  • カリガネソウの花と未熟な果実

北海道から九州の低山の林縁に生える多年草。湿り気のある所を好みます。茎や葉にある独特な香りは、たおやかに咲く花からは想像できないものでお世辞にもよいとは言えません。高さ1mほど、茎は四角く葉は向かい合ってつきます。茎の上部は枝分かれして、先端や葉のわきからまばらに花をつけます。淡紫色の花弁は上部に2つ、下部に3つに大きく裂け、下の一番大きな花弁に斑が入ります。雄しべ4本と雌しべ1本は上に突出しカールしています。一番下の花びらが大きいのは昆虫がとまりやすいため、斑は蜜の場所を知らせるためで、花の蜜を吸うと背中に花粉が付く仕組みになっています。花のあとがくの中に4つの果実ができます。花の姿から別名ホカケソウ(帆掛草)とも呼ばれます。

2021.8

ミゾカクシ Lobelia chinensis Lour. / キキョウ科

  • ミゾカクシ
  • 雄性期の花(左)、雌性期の花(右)

日本、朝鮮、中国、インド、マレーシアに分布する多年草。
湿った所を好み、日本では田んぼのあぜや溝ぎわに見られます。茎は細かく枝分かれし、根を出して広がります。先端は立ち上がりますが高さ10~15㎝。長さ1~2㎝の長楕円形の葉が交互に出ます。葉にはわずかにギザギザがあります。
花は6~10月で、上部の葉のわきに1つずつつけます。花の直径は0.7~1㎝、白色から淡紅色まで変異があります。花びらは5つに裂け、真ん中の3枚は下向きですが、両端の2枚は地面に対して水平です。黒い筒の中でまず初めに雄しべが成熟します。この時は筒の先端から毛のようなものが見えます。その後めしべが柱頭に花粉をつけながら出てきます。めしべの先端は丸く、二つに分かれています。
アゼムシロという別名もあります。「溝隠し」、「畔むしろ」、どちらもびっしりと群落を作ることからつけられた名前です。

2018.8

ミソハギ Lythrum anceps (Koehne) Makino / ミソハギ科

  • ミソハギ
  • 筒と付属片

日本と朝鮮半島に分布する多年草。旧暦のお盆のころに咲き、禊(みそぎ)に使うハギに似た植物という事でこの名前がついたようです。日当たりのよい湿地や畔に生え、盆花として栽培されたりもします。高さは1mほどで茎は四角く、細長い葉は向かい合って互い違いにつきます。全体無毛です。7~8月に上部の葉のわきに紅紫色の花をたくさんつけます。一つの花は直径1㎝弱と小さいですが満開になると穂のようです。花の先は4~6つに裂けています。がくは筒状になっていて縦に細かい溝があり、先端に針のような付属片があります。ミソハギは付属片が平らに開きますが、開き具合が他種との見分けポイントです。千屈菜(せんくつさい)という名で下痢止め、膀胱炎等薬用としても用いられます。水辺でミソハギの咲く姿を見れば少しは暑さも和らぐでしょうか。

2018.8

メドハギ Lespedeza cuneata (Dum.Cours.) G.Don / マメ科

  • メドハギ
  • メドハギの花

日本、朝鮮、中国、ヒマラヤ、アフガニスタン、マレーシアに分布する多年草。日当たりのよい草原に生えます。ハギの仲間は大きいものもありますが、すべて「草本」に分類されています。茎は直立して高さ60~100㎝、互い違いに葉をつけます。小さい葉3枚一組で一つの葉を構成しています。花は6~7mmの蝶型で、葉のわきに数個ずつつきます。白い花びらに赤紫色の斑があります。種子が一つだけ入った、豆形の平たい果実を作ります。秋の七草で有名なハギですが、「ハギ」という名の植物はなく、実際には「ヤマハギ」や「ツクシハギ」、「ビッチュウヤマハギ」ではなかろうかと言われています。『万葉集』ではハギを読んだ歌が最も多く、絵画や工芸品の文様として描かれている秋の草にもハギは最も多く使われています。植物体の美しさに加え、飼料、道具、薬用と利用価値が多く、日本人の生活に密着に密着していたことがうかがえます。

2016.8

ハートカズラ Ceropegia woodii Schltr. / キョウチクトウ科

  • ハートカズラ
  • ハートカズラの塊茎

南アフリカ原産の多年草。ハート形の葉を観賞するために栽培されています。茎は糸のように長く垂れ下がり、2m近く垂れることもあります。茎の途中に塊茎を作り、これを植えれば容易に殖やすことができます。葉はハート形で長さ1.5~2.5㎝で向かい合ってつきます。葉の表面は葉脈に沿って銀白色の模様があり、裏面は赤紫色です。葉のわきから2,3個ずつ花がつきます。花は薄紫色の筒状で、底が丸く膨らんだ構造、花弁の先は黒紫色で5つに裂けていますが、先端で再びくっついています。下向きの毛がたくさん生えています。これは昆虫による受粉に適応した形で、花の中に引き寄せられた昆虫が下向きの毛によって脱出しにくい構造になっています。

2016.8

ボタンヅル Clematis apiifolia DC. var. apiifolia / キンポウゲ科

  • ボタンヅルの花
  • 枯れ枝に巻きついた葉柄

本州から九州にかけての山野に生える、つる植物。ぎざぎざのある3枚の小さな葉が合わさって1枚の葉をつくり、長い葉柄をからませて樹木の上にマントのようにおおいかぶさって広がります。葉は向かい合ってつき、茎は若いうちは緑色ですが、だんだん木質化します。8月の終わりごろ、葉の間からクリーム色がかった白い花をたくさん咲かせます。一つの花の直径は2㎝くらい、十字の花びらのように見えるのはがくです。がくは開花後早く散ってしまいますが、雄しべと雌しべだけ残ります。秋には先端に羽毛をつけた果実ができ、これもかわいらしいです。寒くなると葉を落として枯れたように見えますが、春になると再び芽吹いて旺盛に広がります。繁殖力は強く、地面にふれた茎からも根を出して広がることができます。

2015.8

スズメウリ Zehneria japonica (Thunb.) H.Y.Liu / ウリ科

  • スズメウリ
  • スズメウリの雌花(左)と雄花(右)

一年性のつる植物で、水辺や湿った所を好みます。名前の由来については、大きな「カラスウリ」に対して「スズメ」とついたとか、白い果実をスズメの卵に見立てたなどと言われています。細い茎から、長さ5㎝ほどの三角形で薄い葉を交互に出し、巻きひげは葉と向かい合って出ます。8月から9月にかけて、葉のわきから直径6mmほどの白い花が咲きます。雌雄異花で雌花の下にある子房がふくれて目立つのでよく分かります。果実は直径1㎝の球形で、熟すと白く、中の黒い種子がうっすら透き通って見えます。中には平たい種子が横に積み重なって入っています。観察園では湿った半日陰の場所から毎年出てきます。細い茎につく小さな花や、透明感ある果実が並んでついている様子はかわいらしく、また繊細な雰囲気をかもし出しています。

2015.8

ショウジョウソウ Euphorbia cyathophora Murray / トウダイグサ科

  • ショウジョウソウの花
  • 花序の拡大 A~Dは文章参照

中央アメリカから南アメリカ原産の多年草ですが、日本では寒さのため1年で枯れてしまいます。赤く色づいているのは葉ではなく、苞(ほう)と呼ばれる部分で、花序の下について花を包む役割をしています。クリスマスのポインセチアに似ていますが、ショウジョウソウの赤色の部分はこれ以上大きくなることはありません。

トウダイグサ科の植物は、杯状花序(はいじょうかじょ)という変わった花のつくりをしています。まず雌花が先に成熟して受粉を行うと(写真下A)、子房が大きく成長して垂れ下がります(写真下B)。その後、雄花が成熟して花粉を出します(写真下C)。時間差で雌花と雄花が成熟することで、同じ個体の花粉がつかないよう工夫をしています。楕円形の黄色く見えるものは蜜腺(写真下D)です。

2013.8

キンミズヒキ Agrimonia pilosa Ledeb. var. viscidula (Bunge) Kom. / バラ科

  • キンミズヒキの花、葉、果実
  • ミズヒキ(タデ科)の花と葉

日本全土の日当たりのよい草原や林縁、土手などに生える多年草。長い穂を出した姿がミズヒキに似ていることからこの名前がついたようですが、ミズヒキはタデ科で、比べてみると葉っぱや一つ一つの花の形は全く違います。キンミズヒキは高さ50~130㎝、大小さまざまな大きさの葉が合わさって一つの葉を構成しています。花は黄色で、5枚の花弁をもち、5~8本の雄しべと2本の雌しべがあります。がくの外側にある外がく片は柔らかいとげ状で、花が終わって果実になっても残って果実を包んでいます。このとげがかぎ針の役割をもち、道行く人の衣服や動物の体に果実を引っかけることで種子を遠くに運びます。

2013.8

ウマノスズクサ Aristolochia debilis Sieb. et Zucc. / ウマノスズクサ科

  • 開く直前の花の内部。花の奥に向かって毛が生えています。(左)雄しべが成熟した時の花の内部。毛が縮んでいます。(右)
  • ウマノスズクサの花。ハエなどが訪れます。

日本や中国の温帯・暖帯に分布するつる植物。花はラッパのような形をしていて虫が入りやすく、しかしいったん入るとなかなか出られない構造になっています。1つの花の中に雌しべと雄しべがありますが、成熟する時期がずれています。雌しべの方が先に成熟し、そのとき虫が中に入ると、通り道に花の奥に向かって毛が生えているため、虫は外に出ることができません。やがて雄しべが成熟すると、通り道の毛が縮むので虫は外に出られます。それまで出口を探して動きまわった虫は、花粉がついた体で外へ出ていきます。

2012.8

カブトムシ Allomyrina dichotomus / コガネムシ科

  • カブトムシ
  • カブトムシの触覚とその拡大

夏の虫といえば真っ先に浮かぶのがカブトムシではないでしょうか。
観察園ではアベマキの樹液を吸いにきていました。成虫の寿命は1~3か月、ワンシーズンです。交尾を終えたメスは腐葉土の中に卵を産みます。幼虫は、腐葉土を食べて2回脱皮して10センチくらいにまで育ち、そのまま冬を越します。
翌年4~6月頃さなぎになり、成虫となります。活動は主に夜で、嗅覚を頼りに樹液の出る木を探します。
カブトムシの嗅覚は鋭く、樹液を探すときなどは触角の先が開きます。開いたところには丸い感覚孔がたくさんあり、ここでにおいを感じ取っているようです。

2010.8

キバナツノゴマ Ibicella lutea /

  • キバナツノゴマの花
  • キバナツノゴマの果実(左)キバナツノゴマの花粉(右)

南アフリカ原産の1年生食虫植物です。葉や茎には腺毛があり、触るとねばねばしていやな臭いがします。このにおいにつられて1mmくらいの小さな虫が葉に捕えられています。
果実は長さ15㎝ほどで、乾燥すると細い部分が二つに割れ、鋭いつめのようになります。見た目はマンモスの牙のようで、別名アクマノツメ、タビビトナカセ、とも言われています。
果実もさることながら、花粉もサッカーボールのような形で特徴的です。

9月のキバナツノゴマはこちら

2010.8

タカサゴユリ Lilium formosanum / ユリ科

  • タカサゴユリ
  • タカサゴユリの花粉

8月になると毎年観察園のあちこちに白い花を咲かせます。種で増えるので思わぬところにも生えています。
花粉は「網の目」模様で、花粉溝が一つ。ユリ科の特徴をよく表しています。

2009.8

エビスグサ Cassia tora / マメ科

  • エビスグサ
  • エビスグサの花

熱帯に広く野生化しており、ときには栽培もされています。日本では沖縄に生えています。
種子が強壮・利尿・眼病治療などに用いられます。血圧を下げる効果もあるそうです。「はぶ茶」として売られているものの多くは、ハブソウではなく、このエビスグサの種子です。相撲の軍配のような形の小葉が3対6枚なのがエビスグサ、5~6対で10~12枚なのがハブソウです。

2008.8

キョウチクトウの仲間 Nerium oleander / キョウチクトウ科

  • セイヨウキョウチクトウの花
  • セイヨウキョウチクトウの葉の裏側

都市でもよく育つので、公園などに植えられます。毒があるので口に入れてはいけません。写真の花はセイヨウキョウチクトウです。キョウチクトウとセイヨウキョウチクトウは、同じ種内の植物(変種)とされています。
陸上植物には、呼吸やガス交換・蒸散などの通路となる「気孔」という器官がありますが、キョウチクトウでは気孔が葉の裏のくぼみの中に入っています。乾燥に耐えるためではないかと考えられています。

2008.8

ナタマメ Canavalia gladiana / マメ科

  • ナタマメの花
  • ナタマメの果実と種子

アジア原産で日本には江戸時代に渡来しました。
漢字では「刀豆」と書き、さやの形がなたに似ていることから名づけられました。中国では血行促進、消炎作用の高い漢方として古くから使われています。
日本では若ざやを薄切りにして福神漬けに利用します。十字の形をしており、ナタマメが多いほど高級品とされます。種子はお茶や味噌漬けなどに利用されるようですが、青酸を含んでいるため、あく抜きをしっかりと行わなければなりません。

2007.8

ヒメヒオウギズイセン Crocosmia x crocosmiiflora / アヤメ科

  • ヒメヒオウギズイセンの花
  • ヒメヒオウギズイセンの葉の表皮細胞

ヒオウギズイセンとヒメトウショウブの交雑によりできた園芸品種です。
観賞用にヨーロッパで育成され、明治時代中期に日本に渡来しました。今では野生化しあちこちでみられます。
乾燥した花をお湯に浮かべるとサフランに似た香りがすることから、属名はギリシア語で「サフラン」と「香り」に由来しています。
紫の写真は葉の表皮細胞の一部を染色したものです。

2007.8

ムクゲ Hibiscus syriacus / アオイ科

  • ムクゲの花
  • ムクゲの花粉

ハイビスカスやフヨウと同じ仲間です。
咲いた花は1日でしぼんでしまうため、「あなただけのために生けました」という意味を込めて、茶花でも夏によく使います。

2006.8

ツユクサ Commelina communis / ツユクサ科

  • ツユクサの花
  • ツユクサの花粉

ツユクサは古来ツキグサと呼ばれていました。
青い色が付くからでしょうか?今でもツユクサの変種、オオボウシバナは友禅の下書きの染料として使用されています。また、よく見ると花びらは3枚あり、2枚は青色1枚は透明です。

2006.8