11月の植物

シコクビエ Eleusine coracana (L.) Gaertn. / イネ科

  • 実ったシコクビエ ・ 若い穂 ・ シコクビエの花

東アフリカの高原地帯が原産地の一年草。インドを経て東アジアに伝わり、縄文時代の後期に中国から日本に伝えられたとされます。高さ1~1.5mほど、茎は硬く直立し、よく分かれます。葉は長さ20~40㎝、幅7~15㎜で細長いです。至って強健なので栽培には手間がかからず、節の途中から根が出れば、切り取って植えても育つほど丈夫です。
春に種まきをし、穂が出るのは夏です。小穂(しょうすい)と呼ばれる小さな花の集まりが2列に並んで穂をつくり、これが数本まとまって放射状に広がります。開花といっても花びらはなく、苞えいと呼ばれるものが開いておしべとめしべが露出し、風を利用して受粉をします。果実は直径1.5~2mmほどの球状で、実ってくると穂が曲がった指のように見えてきます。
英語でfinger(指)millet(雑穀)と呼ばれるのはこの姿が由来のようです。コメが普及する前は粒のままお粥や、粉にして団子などで食されました。現在の日本では食用よりも飼料作物として栽培されることが多いです。

2023.11

サネカズラ Kadsura japonica (L.) Dunal / マツブサ科

  • サネカズラの果実
  • サネカズラの雄花と雌花

関東以西、韓国、台湾の暖帯より亜熱帯に分布する木本の常緑つる性植物。林のへりに生えます。若い枝は赤色を帯び、古い茎はコルク化して太くなります。葉はやや厚くて光沢と革のような質感があります。先がややとがった卵型の葉でごくゆるくギザギザがあります。
花は8月頃咲きますが直径1.5㎝ほど、黄白色の花びらで葉の陰に隠れて咲いているのであまり目立ちません。普通は雌雄異株で花びらは7~24枚、おしべやめしべは球状に集まっています。
秋になると真っ赤な集合果となります。直径2~3cm、一つの小さな果実に2~5個の種子が入っています。果実は南五味子(なんごみし)といい薬用に用いられます。枝を水に浸して採れる粘液は整髪料として使われたようです。万葉集や小倉百人一首など和歌にも登場します。

2022.11

ツルソバ Persicaria chinensis (L.) H.Gross  / タデ科

  • ツルソバ
  • ツルソバの花の拡大

房総半島以南の本州太平洋側、韓国、中国、台湾、東南アジアやマレーシアなど暖地の海岸近くの林縁に生える多年草。名前の通りソバに似た花を咲かせ、茎はツル状に伸び時に2ⅿほどにもなります。葉は毛がなく先のとがった卵型で長さ5~10㎝、互い違いにつきます。茎は赤みを帯び、葉が出ている所には薄い膜質の托葉があります。托葉は葉が変化したもので、小さな葉を守る役割があると言われています。花は5~11月と長く、赤みを帯びた白色の小さい花が10~20個ずつかたまって枝先につきます。花びらのように見えるのはがくで5つに裂けています。花びらはありません。花の後、がくは多汁質になり黒い果実を包みます。食用にもされているようです。ツルソバには自分の花粉では実を結ぶことができない性質があります。観察園では1本の枝を挿し木して育てたので残念ながら果実ができない状況です。

2021.11

ヒメツルソバ Persicaria capitata (Buch.-Ham. ex D.Don) H.Gross / タデ科

  • ヒメツルソバ
  • ヒメツルソバの花

ヒマラヤ原産の多年草。茎がよく枝分かれして横にふえ広がるので、園芸用のカバープラントとしても利用されます。高温、乾燥に強く丈夫なのでしばしば野生化しているようです。観察園でもビニールハウスの周りが定位置で年中見られます。茎が地面についたところから根を出して広がり、葉は先のとがった楕円形で、互い違いに出ます。中央にV字形の斑があります。葉や茎には赤褐色の毛が生えます。夏になると茎の先端が枝分かれして、一つが長さ3mmほどの小さな花を球状にたくさんつけます。白っぽいものからピンク色のものまで様々です。花が終わった後も果実をつつんだまま花弁は散らずそのままで、こんぺいとうのようです。長く楽しむことができます。秋に中を割ってみると、3稜の黒い果実ができています。秋が深まり寒くなると茎や葉が赤く色づきます。

2016.11

フレンチ・マリーゴールド Tagetes patula L. / キク科

  • フレンチ・マリーゴールド
  • 葉の油点

メキシコを中心とした中央アメリカが原産の一年草。最も早くアメリカ大陸からヨーロッパに広がった植物の一つです。日本には江戸時代の前半に渡来しています。フレンチという名は、本種がフランスを経てヨーロッパに広がったことに由来します。高さは50㎝ほど、互い違いに出る葉は鳥の羽根状に左右に小さい葉をつけます。植物全体が独特の香りがあり、葉の裏を見ると油点がぽつぽつとあるのが分かります。たくさん枝分かれし、茎の頂上に直径3~6㎝ほどの花を咲かせます。一重、八重、色もオレンジや赤みがかったものなどさまざまで、園芸品種もたくさんあります。花期が長いので花壇の花としてよく利用され、また土壌に漉き込むとセンチュウの駆除に有効とされています。

2016.11

フウセントウワタ Gomphocarpus physocarpus E.Mey / キョウチクトウ科

  • フウセントウワタ
  • 割れた果実から飛び出た種子

南アフリカ原産の植物で、近年の分類体系ではガガイモ科からキョウチクトウ科に移りました。観賞用に栽培されます。つるつるで細長い葉を互い違いにつけながら高さ1~2mほどになります。夏に葉のわきから白い小花が吊り下がるようにして咲きます。

花もかわいらしいですが、断然目を引くのは風船状にふくれた果実です。表面には柔らかいとげ状の突起があり、中は中心に毛に支えられた種子が並んでいますが周りは空洞で、外からさわるとふわふわしています。果実が熟すと縦に裂けて、中から綿毛を持った種子が風に乗って飛び出します。

植物体を傷つけると白い汁が出ますが、これは有毒で目に入ると角膜炎を起こすことがあるので注意が必要です。

2015.11

ツワブキ Farfugium japonicum (L.) Kitam. / キク科

  • ツワブキの花
  • ツワブキの果実

海岸付近によく生育する、常緑の多年草。日本では、石川県、福島県以西と中国、朝鮮、台湾に分布します。葉の大きさは縦横ともに15~25㎝、円形に近く、フキの葉とよく似ていますが、ツワブキの葉には厚みと光沢があります。地中に太い地下茎があり、長い柄を持った葉は地面から直接出ているように見えます。若い葉は褐色の毛におおわれていますが、だんだんとれて無毛となります。若い葉の葉柄は食べることもできます。秋から冬にかけて30~75㎝の花茎を出し頂上に直径4~6㎝のキクのような黄色の花を咲かせます。花の後は、タンポポのような綿毛を持った果実ができます。日陰に強いので、庭にもよく植えられ、色々な品種があり、観察園には黄色の斑の入ったものもあります。

2013.11

ツルグミ Elaeagnus glabra Thunb / グミ科

  • ツルグミの花
  • ツルグミ(左)とナワシログミ(右)の葉裏

福島県以南の日本、中国、朝鮮、台湾に生育する、つる性の常緑低木。枝には赤褐色の鱗片があり、時に「逆枝」と呼ばれる下向きの短い枝を出して、他の木にひっかかりながら長くのび、垂れ下がります。葉は先の長い長楕円形で、葉の裏にも赤褐色の鱗片があります。花は10~11月、先端が4つに裂けたラッパ型です。白色で、花びらの外側にも鱗片があります。果実は5月ごろ赤く実ります。

グミの仲間は春に花が咲くものが多く、秋に開花するのはツルグミとナワシログミくらいです。ナワシログミも勢いのよい枝はつるのように長く伸びるので、見分けるのが難しい時もありますが、ツルグミの鱗片が赤褐色であるのに対して、ナワシログミは白色で、葉の周りが波打ってやや裏側に巻き込んでいることで見分けます。

2013.11

アイ Poilgonum tinctorium / タデ科

  • アイの花と生葉染めの布
  • アイの花粉

東南アジア原産の一年生植物です。日本には飛鳥時代に中国から渡来しました。藍色の染料として有名ですが、薬用にもなり、葉や実が漢方薬として利用されます。

アメリカでジーンズが広がったのは、藍染めの服が毒ヘビよけになったためだそうです。生の葉で染めると明るい水色に、摘んだ葉を乾燥、発酵させて「すくも」にし、さらに発酵させた液で染めると藍色になります。


アイの花粉はくぼみだらけです。ところどころにある深いくぼみは、花粉孔と思われます。

2010.11

ウラナミシジミ Lampides boeticus / シジミチョウ科

  • ウラナミシジミと卵
  • 触角の間にある下唇ひげ

はねを広げると13~18mm、普通にいるチョウです。夏から秋にかけて繁殖しながら北へと広がっていき、この辺りで見られるのは秋です。

卵はマメ科の花や、ごく若いさやに産み付けられ、幼虫はさやにもぐって豆を食べて育ちます。


一部へこみを作ってしまいましたが、卵の表面にはレース編みのような網目模様があります。チョウによって模様や色はさまざまです。触角の間には下唇ひげとよばれる、ごく小さい突起があります。あごの一部が退化したもの だそうです。

2010.11

ヨウシュヤマゴボウ Phytolacca americana / ヤマゴボウ科

  • ヤマゴボウの実

写真は実がまだ若いときのものですが、今は黒紫色に熟している頃です。
北米原産の帰化植物で、日本には明治初期に入り、雑草となっています。
果実は昔、ワインや菓子の色づけに使われたそうです。しかし、毒があることがわかり、今では使用が禁止されています。ヤマゴボウ科の毒は、おう吐、めまい、流産などを引き起こします。山菜として売られている「山ごぼう」は、ゴボウと同じキク科の植物で、ヤマゴボウ科とは関係ありません。

2008.11

クリ Castanea crenata / ブナ科

  • クリの花
  • クリの葉の表皮細胞

秋の実の代表選手ともいえるクリ。丹波栗のような大きな実は栽培グリのもので、山に行くと、小粒の実をならせる野生のシバグリ(柴栗)に出会うことができます。
春に咲く花はムッとする匂いをあたりに漂わせ、虫に花粉を運ばせます。
紫の写真は葉の裏の表皮を染色したものです。葉の裏には、星状毛とよばれる毛がたくさん生えています。

2008.11

サフラン Crocus sativus / アヤメ科

  • サフランの花
  • サフラン水

薬用や食品の着色料としてヨーロッパの各地、日本でも栽培されています。
開花後、赤いめしべは長く垂れ下がり、それを摘み取って利用します。先端が3本に裂けていますが実際には1本で、1gのサフランを採るには300個もの花が必要といわれています。
サフランライスやパエリアの黄金色はサフランの色で、薬用では婦人病に効くとされています。

2007.11

カリン Pseudocydonia sinensis / バラ科

  • カリンの実
  • カリンの葉の表皮細胞

中国北部に野生する落葉高木ですが、いつごろ中国から渡来したかは明らかではありません。
4~5月ごろ、新葉と共に桃色の可憐な花を咲かせます。果実は秋になると黄色に色づき、芳香を放ちます。果肉は硬く、渋いので生食はできませんが、カリンの成分は喉の炎症を鎮めるとされ、果実酒やジャムなどに利用されます。
紫の写真は葉の裏の表皮細胞の一部を染色したものです。濃く染まっているのは毛です。

2007.11

コナラ(ドングリ) Quercus serrata / ブナ科

  • ドングリ
  • コナラの花粉

コナラやカシ、シイの仲間の実を総称してドングリと呼びます。
写真の花粉は、コナラ(ブナ科)Quercus serrataです。ドングリの木は薪や炭にしたり、椎茸栽培に使ったり、実は食用にもなります。
この時期になると観察園でも数種類のドングリが、落ちています。

2006.11

サフラン Crocus sativus / アヤメ科

  • サフランの花
  • サフランの花粉

秋に咲くクロッカスの仲間ですが、3本の赤いめしべが、黄色い染料になるため、よく知られています。
パエリヤ、サフランライス、カレーなどに使います。

2006.11