10月の植物

ミゾソバ Persicaria thunbergii (Siebold et Zucc.) H.Gross / タデ科

  • ミゾソバ
  • 花の拡大・茎の逆向きのとげと星状毛

北海道から九州、朝鮮、中国、ウスリー、サハリン、アムールに分布する一年草。水湿地に生えます。高さ30~100㎝、茎の下の方は地面を這い、地面についた節からは根が出ます。上部は立ち上がりますが、茎にある逆向きの小さなとげで他の植物に引っかかるようにして伸びることもあります。
葉はほこ形で、先は尖り基部に近い部分で少しくびれたのち張り出しています。互い違いに出ます。葉の表も裏も剛毛と細かい星状毛があり、葉のふちの毛はよく目立ちます。葉柄には翼がつくこともあり、同じく毛もあります。葉が変化してできた托葉は茎を包み、縁は葉のようになることもあります。
花は7~10月。茎の頂上や上部に小さな花が集まっています。花びらに見える部分はがくです。がくは5つに裂け、下部は白色、上部は桃色、花の長さは3~4㎜です。開花が終わってもがくは果実を包んで長く残ります。茎の下部から出た枝からは閉鎖花をつけることもあります。これは花の一部、または全部が開かなくても内部で自家受粉して果実をつくってしまう現象です。多様性は望めませんが確実に種子をつくって生き延びる方法の一つと言えます。

2023.10

コメナモミ Sigesbeckia glabrescens (Makino) Makino / キク科

  • コメナモミ
  • 花の拡大(上)・1つの花「舌状花」(下)

温帯から亜熱帯に生育し、日本、朝鮮半島、中国に分布する一年草。山野や荒れ地、道端などに生えます。三角形をした葉は向かい合ってつき、周りにはギザギザがあります。全体には毛もあります。
秋に茎の頂上に直径1㎝ほどの花をまばらにつけますが、これは小さな花の集まりです。一番外を囲んでいる花は舌状花といい、3つに裂けた花びらを持ち、その内側にある花は筒状花といいラッパ状で先端が裂けた花です。黄色い部分を取り囲むように並ぶ5つのさじ状のものは総苞片といい、葉っぱが変化したものです。
花にも総苞片にも腺点がたくさんあり、少しべたつきます。このべたべたで服や動物の体に果実をくっつけて種を遠くへ運びます。とりもち式のくっつきむしといえます。

2022.10

ホトトギス Tricyrtis sp. / ユリ科

  • ホトトギス
  • 上:花の拡大 下:タイワンホトトギス

山の半日陰に生える多年草。高さは40~80㎝、葉は互い違いに茎を抱くようにつき、先のとがった長い楕円形です。
葉の両面、茎、花びらの外側には毛が密生しています。9~10月に葉の脇および茎の先端に花をつけます。
白地に紫色の斑点が入った花びらは6枚、外側の3枚の基部はふくらんで玉状になっています。
花の中央で噴水状に広がっているのはめしべで、めしべの下にぶら下がるようにおしべがあります。めしべには玉状の突起がたくさんあります。
名前の由来は、紫色の斑がホトトギスという鳥の胸の斑紋と似ているところからつけられたようです。
日本在来のホトトギスは葉の脇にしか花がつきません。茎の先端に花がつくタイワンホトトギスとの交配種は葉の脇にも茎の先端にも花がつき見ごたえがあります。
観察園のものも含め、庭に植えられているものは多くが園芸種と思われます。

2021.10

コムラサキ Callicarpa dichotoma (Lour.) K.Koch / シソ科

  • コムラサキ
  • 葉と花序のすき間

本州以南、台湾、中国に生育する落葉低木。高さは2mほどにしかならず、秋の果実が美しいので庭木としてもよく利用されます。株元から紫色を帯びた枝をたくさん出し、楕円形で先のとがった葉を向かい合ってつけます。若い枝や葉には星状毛があります。ムラサキシキブとよく似ていますが、ムラサキシキブは葉の全体がギザギザなのに対し、コムラサキのギザギザは葉の上半分しかありません。また、葉の付け根から花の枝を出しますが、葉と枝の間にすき間があるのが特徴です。花は7~8月、薄紫色で長さ4mmほどの小花をたくさんつけます。秋になると直径3mm位の球形の果実が紫色に色づきます。
観察園ではハッチョウトンボの棲む水がめ近くにひょっこり生えてきました。鳥に運ばれたのでしょうか。昨年からやっと果実をつけるようになりました。湿った所を好むようです。

2016.10

トラノオスズカケ Veronicastrum axillare (Siebold et Zucc.) T.Yamaz / オオバコ科

  • トラノオスズカケ
  • 花の拡大

山の木陰に生える多年草。四国・中国・九州地方に多く、暖かい地方の植物と思われます。山伏の衣装の「鈴懸」に見立ててこの名がついたと言われます。茎は長く、たわんで垂れ下がるようにのび、地面についた茎から根を出します。茎はやや角ばり、ぎざぎざのある、卵型で先がとがった葉を互い違いにつけます。葉や茎には毛がありません。花は秋で、葉のわきから赤紫色で穂のような花を咲かせます。長さ5~6mmの筒状の小さな花が集まり、4㎝ほどの穂になります。2本のおしべと1本の針のようなめしべが花びらから飛び出しています。東京、国立科学博物館附属自然教育園にもトラノオスズカケがありますが、この地はもと高松藩の下屋敷であり、当時平賀源内が移植したのではないかと牧野富太郎が推論しています。

2016.10

パンパスグラス Cortaderia selloana (Schult. et Schult.f.) Asch. et Graebn. / イネ科

  • パンパスグラス
  • 葉の拡大

アルゼンチンからブラジル南部にかけて分布する多年草。シロガネヨシともよばれます。各国で観賞用に栽培され、日本には明治時代に導入されました。公園や庭、切り花などに利用されます。穂がピンクや紫がかったものもあります。

ススキに似ていますが、綿毛のようなふわふわな花穂は30㎝~70㎝にもなり大きくて見ごたえがあります。株も毎年大きくなり、小山のようになっています。

葉は細くて長く、株元から密生して生えています。葉の両端と中心の葉脈には硬くて細かい突起がたくさんあります。さわるとざらざらし痛いです。手を切らないように気をつけましょう。

2015.10

ノコンギク Aster microcephalus (Miq.) Franch. et Sav. var. ovatus (Franch. et Sav.) Soejima et Mot.Ito / キク科

  • ノコンギクの花
  • 舌状花(左)と筒状花(右) 毛があるのも見えます

本州、四国、九州の野山や道ばたに分布する多年草。「野菊」と呼ばれるものの一つです。非常に多くの変種があります。高さは30~100㎝、たくさん枝分かれし、両面に毛がある葉を互い違いにつけます。花は茎の先端にそれぞれつき、直径2.5㎝ほど。観察園のものは薄紫色ですが、色の濃さはいろいろです。キクの仲間は小さい花が集まって大きな花を作っています。花びらのない黄色い部分の花は筒状花、紫色の部分の花は舌状花といい、形は全然違いますが、それぞれが雄しべと雌しべを持った一つの花です。ノコンギクの小花には5mmほどの冠毛(かんもう)と呼ばれる毛が生えているのが特徴で、よく似ているヨメナと見分けるポイントとなります。地下茎が横にはい広がり、あっという間に群生を作ります。花の少ない時期、ハッチョウトンボのかめの周りを彩ってくれます。

2013.10

フウセントウワタ Gomphocarpus physocarpus E.Mey / ガガイモ科

  • フウセントウワタの花と果実
  • はじけた果実

南アフリカ原産の亜低木。日本では寒さのため1年で枯れますが、よく枝分かれして高さ1~2mにもなります。庭に植えたり、生け花の材料にもされます。長さ10㎝ほどの細長い葉は向かい合ってつき、植物体をちぎると白い乳液を出します。8~9月頃から、葉の腋から花茎を出して白い小さな花をつけます。

花は雄しべと雌しべが組み合わさった、蕊柱(ずいちゅう)を形成しています。花粉も粉ではなく、互いに結合し合った花粉塊(かふんかい)となっています。花粉塊には粘着力があり、花に訪れた昆虫にくっついて花粉を運んでもらう仕組みになっています。

柔らかいとげをもった果実は風船のようにふくらみ、茶色くなるとはじけて、中から長い綿毛を持った種子が舞いあがります。

2013.10

ナンバンギセル Aeginetia indica L. var. gracilis Nakai / ハマウツボ科

  • 紫色のナンバンギセルの花。観察園ではススキの鉢から生えてきました。

日本各地に分布しています。寄生植物で、ススキ、ミョウガ、サトウキビなどの根に寄生します。花の形が西洋のパイプ(マドロスパイプ)に似ているのでこの名前がつきました。別名は「思ひ草」で、万葉集などで「思ひ草」と詠われたのはこの植物だといわれています(「道の辺の をばなが下の思ひ草 いまさらさらに 何をか思はむ」万葉集より。「をばな」とはススキのこと)。
植物はふつう自分の葉で光合成しますが、ナンバンギセルなどの寄生植物はほかの植物の根などから養分を取って生きています。ナンバンギセルが属しているハマウツボ科の植物は、その多くが寄生植物です。ハマウツボ科の多くは、全栄養を宿主(寄生される側)から取る「全寄生植物」ですが、ヤドリギなどは自分でも光合成を行なう半寄生植物です。

2012.10

ゲンノショウコ Geranium nepalense / フウロソウ科

  • ゲンノショウコの花
  • ゲンノショウコの花粉

多年草で、日本全国の草原で見られます。古くから下痢止めの薬草として知られており、効き目がすぐに現れることから、「現の証拠」と名付けられました。

茎はよく枝分かれし、地面をはって広がります。夏から秋にかけて直径1~1,5cmほどの花が2個ずつ対になって咲きます。白、淡紅、紅紫があり、観察園のものは白色です。熟した果実は下から上へ縦に裂けながら種子を飛ばします。


種を飛ばした後の果実の形を神輿の屋根に見立てて、ミコシグサとも言われます。

2010.10

ヤマトシジミ Pseudozizeeria maha / シジミチョウ科

  • ヤマトシジミと食草のカタバミ
  • 脚先の拡大

田畑や人家周辺でよく見られる小型のチョウです。卵はカタバミの葉に産み付けられ、幼虫はカタバミの葉の裏をけずるようにして食べます。4回目の脱皮でさなぎになり、羽化して成虫となります。右がメスで左がオスで、これは交尾の様子です。

脚の先を拡大したものが上の写真です。細かい毛がたくさん生えている中に2本の大きなかぎ爪があります。植物にしっかりと止まっていられるのはこのかぎ爪のおかげでしょう。可憐なチョウの姿からは想像がつかないですね

2010.10

パンパスグラス Cortaderia argentea / イネ科

  • パンパスグラス

ブラジル南部・アルゼンチン原産の背の高い草です。シロガネヨシとも呼ばれます。アルゼンチンでは、パンパと呼ばれる草原で大群落を作るそうです。
南米ではパルプの原料に使うため栽培されます。耐寒性があり、日本では観賞用に植えられます。
斑入りの品種や、穂がうす紅色になる品種もあります。葉の縁がギザギザになっているので、触るときは手を切らないよう気をつけましょう。

2008.10

ナワシログミ Elaeagnus pungens / グミ科

  • ナワシログミの花
  • ナワシログミの葉の裏側

花は秋に咲き、実は翌年の春ごろ熟します。「苗代(なわしろ:稲の苗を育てるところ)」をつくるころ実になるので、この名前がつきました。
漢方では、種子を乾燥させたものを下痢止めに、葉や根などをぜんそくや出血の治療に使うそうです。
右の写真は葉の表皮を染めたものです。輪のようにみえる濃く染まった部分は、鱗のような形の毛「鱗片毛」の柄にあたります。

7月のナワシログミはこちら

2008.10

ヘビウリ Trichosanthes anguina / ウリ科

  • ヘビウリの雄花
  • ヘビウリの果実

インド原産で日本には明治時代末期に渡来しました。
果実は曲がりくねって名前のとおり「蛇」のようです。大きくなるに従って重みで真っ直ぐに伸び、時には2m近くにもなります。熟するとオレンジ色に変色します。
原産地では食用にしますが、日本では主に観賞用に栽培されます。
カラスウリと同じ仲間なので、奇妙な果実とは相反して白い花の先端は糸状に裂け、さわやかです。

2007.10

サンゴジュ Viburnum odoratissimum / スイカズラ科

  • サンゴジュの花
  • サンゴジュの葉の表皮細胞

本州西部から沖縄にかけてと中国大陸に分布しています。
性質が強健で適応能力が高いので、生垣によく使われ、防火樹としても優れています。
初夏に白い花を咲かせた後は真っ赤な果実をつけます。果実が珊瑚のように見えるのでこの名前が付けられました。
写真は葉の表皮細胞の一部を染色したものです。

2007.10

シソ(アカジソ) Perilla frutescens var. crispa / シソ科

  • シソ(アカジソ)の花
  • シソの花粉

シソは、日本人にもっとも馴染みの深い香辛料で、アカジソは、梅干しに使われ、風味と赤い色を出します。アオジソの葉は薬味に使えます。花や種も料理に使用します。また、漢方薬としても数々の効能があります。

2006.10

ヘビウリ Trichosanthes anguina / ウリ科

  • ヘビウリの花(左)ヘビウリの花粉(右)
  • ヘビウリの実

見てのとおり、実がヘビのように長くなるのでこの名がつきました。インド原産のつる性の一年草です。
花はカラスウリとよく似ていますが、実は1メートルほどになります。

2006.10