5月の植物

センダン Melia azedarach L. / センダン科

  • センダンの花
  • センダン 花の拡大、果実(冬)

暖地に生える落葉低木。育ちが早く、通常は 10mほどですが、大きくなると時に 20mにもなります。 建材や家具に利用され 、世界中の熱帯から温帯で栽培されており、野生化しているものもあります。
葉は互い違いにつき、一つの葉はギザギザのある小さな葉 を 2〜3回羽状につけます。 花は5 〜6月で、葉の脇から薄紫色の小花を円錐状につけた花序を出します。 ほのかに香りがあります。
一つの花は直径 2㎝程度 、花びらは 5 〜6つに裂けています。中心の濃紫色はおしべでの花糸で10本がくっついて筒となります。先は細かく裂け、内側に花粉を出す黄色い葯があります。めしべ 1本は中心にありますが、奥まっていて見えにくいです。
冬には長さ 1.5〜2㎝、薄黄色で楕円形の果実ができます。冬の鳥たちの貴重な食料となり、春にはあちこちで芽生えが見られます。
「 栴檀(せんだん) は双葉より芳し」ということわざがありますが、これはビャクダン のことを指し、この樹木のことではありません。

2023.5

クララ Sophora flavescens Aiton / マメ科

  • クララの花
  • クララの若い果実

日当たりのよい山野の草地、河原などに多い多年草。本州以南、朝鮮、中国、ロシアに分布。
高さは80~150㎝、根元近くは木質化し一見木のように見えますが冬に地上部は枯れてしまいます。
一つの葉は15~35枚の細長い卵型の葉の集まりです。葉の裏には毛があります。茎や葉柄、花柄にも伏せた毛があります。
花は淡黄色で枝の先端に蝶型の花が房状に集まって付きます。一つの花は長さ1.5㎝程度、いわゆるマメの花の形をしていますが、花びらが大きく開くことはありません。下から上へ向かって咲いていきます。花の後、中に4~5個の種子を入れたくびれのある細長いさやをつけます。
漢方薬に用いられ、健胃や家畜の駆虫薬となります。根を噛むと目がくらむほどに苦いことからこの名前がついたようです。

2022.5

ハリグワ Maclura tricuspidata Carrière  / クワ科

  • ハリグワ
  • 雄花の拡大(左) ハリグワのトゲ(右)

中国や朝鮮原産の落葉小高木。雌雄異株で観察園にあるのは雄株だけです。脇芽は短くまっすぐに伸びてトゲになります。
葉は先のとがった楕円形で互い違いにつき、葉の周りにぎざぎざはありません。
開花は5月から6月にかけてで、淡黄色の小花が集まって直径1.2㎝ほどの球形となり葉のわきにつきます。
一つの小さな花には4枚の花びらと4本のおしべがあります。雌花も同じように小花が球形に集まり葉の脇につきます。
雌花は赤く熟した果実となり食べられるそうです。樹皮や根は腰痛や喀血の薬に、樹皮は製紙材料にもなるので時に栽培されます。
丈夫で根でどんどん増え広がります。

2021.5

フタリシズカ Chloranthus serratus (Thunb.) Roem. et Schult. /

  • フタリシズカの花

北海道から九州の山野の林内に生える多年草。全体に毛はなく高さ30~60㎝。ふちにギザギザのある葉を2枚ずつ向かい合ってつけます。頂上は節が詰まっているので4枚の葉が向き合っているように見えます。花は4~6月、小さな白い花をたくさんつけた花穂を茎の頂上から出します。2本のことが多いですが、1本だったり3~5本くらいつくこともあります。センリョウの仲間は花びらやがくを持ちません。白く見えるのは雄しべで内向きに丸まっています。雄しべに包まれるようにして雌しべがあります。センリョウ科の植物は花の形が単純なので被子植物の中でも原始的であると位置付けられています。

2020.5

チャラン Chloranthus spicatus (Thunb.) Makino / センリョウ科

  • チャランの花
  • 花の拡大(右の花は断面)

中国が原産の常緑低木。中国では茶葉に香りをつけるのに用いられ、この名がついたようです。
花の香りがよく、年中つやのある葉を楽しめるので日本には江戸時代に渡来し、観賞用に栽培されます。葉は5~10㎝の先がとがった楕円形で、厚く光沢があります。全体には毛はありません。枝は直立せず横へのび広がります。5~6月に茎の頂上から薄黄色の小花をつけた花穂を出します。チャランの花はフタリシズカとそっくりで、こちらも花びら、がくはありません。断面を見るとおしべは内向きに花粉を出し、おしべのつけ根にめしべがあるのが分かります(右写真)。

2020.5

マムシグサ Arisaema japonicum Blume / サトイモ科

  • マムシグサ
  • マムシグサの仏炎苞(左)と葉(右)

湿り気のある林の中や林縁に生える多年草。今年観察園で見られるものは高さ40㎝ほどですが、大きいものは120㎝ほどにもなります。葉はふつう左右へ2個出ます。よく見ると最初に3つに分かれ、左右の葉はさらに3つに分かれ、1枚の葉を7つの小葉で構成しています。このような葉のつきかたを鳥足状複葉といいます。冬地上部は枯れますが、春になると葉身が地上へでてきます。花のように見えるのは仏炎苞(ぶつえんほう)といいます。苞とは葉が変化したもので、仏炎苞は苞が大きくなり花の集まりを包みこんで守っています。中をのぞいてみると、下の方に花の集まりがあり、上の方に付属体とよばれるこん棒状のものがついています。マムシグサはじめとするテンナンショウの仲間は雌雄異株ですが、栄養条件や個体の大きさによって性転換することが知られています。

2018.5

コバノズイナ Itea virginica L. / ズイナ科

  • コバノズイナ
  • 花の拡大

北アメリカ東部原産の落葉低木。日本には明治初期に渡来しました。丈夫で株立ち状によく茂ります。秋の紅葉も美しいので庭木や盆栽、生け花などに利用されます。日本の在来種にはズイナがあります。見た目は似ていますが、葉の大きさも花穂の長さもズイナのほうが大きいです。
葉は先のとがった卵型で長さ4~8cm、周りには細かいぎざぎざがあり、葉裏には粗く毛があります。5~6月に枝先に白い小花を長さ 5~10cmの房状につけます。基部から順に咲いていきます。一つの花の大きさは長さ5mm位。5枚の花びらと5本の雄しべ、1本の雌しべがあります。花のついている軸やがく、花びら、雄しべや雌しべの根元には細かな毛があります。花のついている軸や葉柄は赤く若い枝も赤みを帯びています。葉の黄緑色と花の白色、枝の赤みのコントラストが美しく、春らしさを引き立ててくれます。

2018.5

アヤメ Iris sanguinea Hornem. / アヤメ科

  • アヤメの花
  • アヤメの白花品種

山地の草地に生える多年草。高さ30~50㎝。湿地を嫌うので畑などに植えられていることもあります。名前の由来は垂れ下がった花びらの中心部分に紫色の網目模様があることによります。紫色のほか、栽培種で白色のものもあります。5~6月に咲く花の直径は約8㎝で、一つの茎に2,3個ずつつきます。横にはう地下茎でふえます。
「いずれあやめかかきつばた」はどちらもすぐれていて選択に迷うたとえに使うことわざですが、記載されている『太平記』では「あやめ」は「菖蒲」と書かれています。「菖蒲(しょうぶ)」は菖蒲湯に利用するサトイモ科の植物で、名前は似ていますが全く違う姿をしています。ハナショウブやカキツバタはアヤメと花が似ている点に加えて、昔は読み方もまちまちだったので混乱しやすいです。ハナショウブとカキツバタは湿地に生えることがアヤメとの大きな違いです。

2016.5

ハリグワ Maclura tricuspidata Carrière /

  • ハリグワ(雄花)
  • ハリグワのとげ

カイコのえさとして養蚕用に輸入された雌雄異株の落葉小高木。名前の通り枝にはとげがあります。とげは枝が変形したもので、長さ5mm~3㎝、枝は節ごとにややジグサグに曲がっています。葉は先のとがった卵型でぎざぎざはなく、互い違いに出ます。5~6月に、葉のわきから直径1㎝の丸い球形の花を咲かせます。これはごく小さい花が集まってできていて、一つの花は4枚の花びらと、雄花では4つの雄しべ、雌花では糸のような1本のめしべがあります。観察園には雄株しかないので果実は見ることができませんが、秋に直径2.5㎝ほどの赤い実ができ、食べられます。原産地の朝鮮・中国では樹皮や根は薬用に、材は黄色の染料や弓、器具として、樹皮は製紙の原料として利用される有用な植物です。

2016.5

スイカズラ Lonicera japonica Thunb. / スイカズラ科

  • スイカズラの花
  • スイカズラの花と果実

山野で見られるつる性の低木。つるは右巻きで、他の植物に覆いかぶさるようにしてからみつきます。つるには初め毛がありますが、育つにつれてなくなります。楕円形の葉は向かい合ってつき、冬も耐え忍んで葉をつけていることから、「忍冬(にんどう)」とも呼ばれてます。5~6月に上部の葉のわきから短い枝を出して2個ずつ花をつけます。花ははじめは白く、咲きすすむにつれて黄色く変わります。花はラッパ型で上部が4つに裂け、底には甘い蜜をたたえ、花が咲くと甘い香りがただよいます。秋には中に数個の種がある、丸くて黒い果実ができます。つるや葉、花やつぼみは薬用に利用されています。

葉の形には色々な変異があり、通常は楕円形ですが切れ込みのあるものや葉の厚みが薄いものなどさまざまです。春先の新しい葉には特に形の変わったものが多く、見分けに悩まされます。

2015.5

ヤマハゼ  Toxicodendron sylvestre (Siebold et Zucc.) Kuntze / ウルシ科

  • 開花中のヤマハゼ(♂)と一つの花(右上)
  • ヤマハゼの樹液(左)と果実(右)

関東地方より西の山中に生える落葉低木。先のとがった楕円形の葉が7~13枚ほど羽根のようにならんで一枚の葉を作ります。葉柄や葉軸には細かい毛が密生していて、頂上にも葉がつくので奇数になります。花は5~6月、枝先の葉の間から黄緑色の細かな花を円錐状に咲かせます。雌雄異株で写真は雄花です。5枚の花びらと5本の雄しべがあります。雌しべもありますが退化して小さくなっています。雌株では秋に扁平でゆがんだ丸い果実をつけ、ロウが採取されていたこともありました。秋の紅葉も美しいです。

ウルシの仲間は植物体をちぎると乳白色の樹液が出ますが、ここにアレルギーを起こす物質が含まれているので皮膚につくとかぶれて皮膚炎を起こします。弱い人では近くを通るだけでもかぶれることがあるので注意が必要です。

2015.5

ニシキギ Euonymus alatus (Thunb.) Siebold f. alatus / ニシキギ科

  • 葉のわきからひっそりと花を咲かせています
  • 世界三大広葉樹のひとつと言われています。

山地に自生し、庭にもよく植えられる落葉低木です。 紅葉を錦に例えてこの名前がついたとされます。枝は緑色で、翼(よく)と呼ばれるコルク質が発達します。葉腋から1~数個ずつ花をつけます。花弁4枚、雄しべ4本、雌しべ1本で、小さくて薄緑色をしているのであまり目立ちません。
秋になると8mmほどの丸い果実ができ、裂けるとオレンジ色の種子がぶら下がるように出てきます。果実を食べる鳥に食べられ、オレンジ色の仮種皮だけが消化されて種子はフンとして排出されます。こうしてニシキギは子孫をより遠くへと広げているのです。

2013.5

ヒメウコギ Eleutherococcus sieboldianus (Makino) Koidz. / ウコギ科

  • ヒメウコギの花(雌株)
  • タラの芽のような風味はウコギ科共通です。

中国原産の落葉低木です。枝にはとげがあることから庭木や生垣として利用され、時に野生化していることもあります。観察園のものは、教養部時代に植物のとげについて研究されていた先生により集められた、とげ植物の一つです。5~6月ごろ花柄を伸ばし、小花を放射状につけます。雌雄異株で日本にあるのはほとんどが雌株です。果実は丸く、黒色に熟します。 山菜でおなじみのタラノキやコシアブラもウコギ科の植物です。ヒメウコギはそもそも薬用植物として日本に持ち込まれたようですが、食用にも利用されます。薬用となるのは樹皮と根で、五加(ごか)といいますが、中国語では(うこ)と発音することから、うこの木、ウコギとよばれるようになったと言われます。

2013.5

ナナホシテントウ Coccinella septempunctata / テントウムシ科

  • ナナホシテントウ(左)ナナホシテントウの小あごひげ(右)
  • ナナホシテントウの脚の毛

身近でよく見られるテントウムシです。成虫、幼虫共に肉食で植物の汁を吸うアブラムシを食べてくれるため、益虫として利用されています。
テントウムシの触覚はごく短く、ふだん触角のように見えるものは、小あごについている小あごひげです。大あごもあります。
脚には先のとがった毛と、先が丸くて吸盤のようになった毛があり、吸盤のおかげでつるつるの面でも登ることができるのです。

2010.5

キソケイ Jasminum humile var. revolutum / モクセイ科

  • キソケイの花
  • キソケイの花粉

常緑低木で、若い茎は角ばっています。
ソケイというのはジャスミンのことです。花が黄色いのでこの名がつきました。花の直径は2.5~3cmです。 ジャスミンにはよい香りがありますが、キソケイはそれほど強い香りはありません。
花粉の表面にはたくさんの穴があります。穴の深さはさまざまで、深い穴は黒く、浅い穴は灰色に写っています。

2010.5

トウカイタンポポ Taraxacum longeappendiculatum / キク科

  • トウカイタンポポの花
  • トウカイタンポポの花粉

名古屋では歩道の脇などに咲いているタンポポは、ほとんどセイヨウタンポポ(外来種)です。総包外片(ガクのように見える)が反り返っているので、トウカイタンポポ(在来種)と見分けが付くと言われます。
しかし、決め手は花粉です。花粉の大きさや形がばらばらなのが、セイヨウタンポポ、大きさや形がきれいにそろっているのが、トウカイタンポポです。
セイヨウタンポポは染色体が3倍体なので、1倍体、2倍体、3倍体の花粉が出来、花粉の大きさも違います。野外観察園では入り口付近に沢山のタンポポがあり、調査をしています。

セイヨウタンポポはこちら

2009.5

セイヨウタンポポ Taraxacum officinale / キク科

  • セイヨウタンポポの花
  • セイヨウタンポポの花粉

名古屋では歩道の脇などに咲いているタンポポは、ほとんどセイヨウタンポポ(外来種)です。総包外片(ガクのように見える)が反り返っているので、トウカイタンポポ(在来種)と見分けが付くと言われます。
しかし、決め手は花粉です。花粉の大きさや形がばらばらなのが、セイヨウタンポポ、大きさや形がきれいにそろっているのが、トウカイタンポポです。
セイヨウタンポポは染色体が3倍体なので、1倍体、2倍体、3倍体の花粉が出来、花粉の大きさも違います。野外観察園では入り口付近に沢山のタンポポがあり、調査をしています。

トウカイタンポポはこちら

2009.5

キショウブ Iris pseudacorus / アヤメ科

  • キショウブの花

日本の湿地や池辺によく生えるので在来植物と思われがちですが、ヨーロッパ原産です。
フランス王家の紋章「フルール・ド・リス」は白百合とされることもありますが、このキショウブを様式化したものだとも言われています。フランク王国のクロービス1世がゴート人に追いつめられたとき、川にこの花が咲いているのを見て浅瀬を知ったために全滅を免れたという伝説に由来します。

2008.5

タラヨウ Ilex latifolia / モチノキ科

  • タラヨウの花
  • タラヨウの葉の表皮細胞

日本では本州西部、四国、九州の山地に生える木です。
葉の裏を傷つけると傷がすぐ黒くなって残ります。文字が書けるので「はがきの木」と呼ぶ人もいますが、この呼び名は図鑑などにあまり載っていません。
寺院などにも植えられ、インドでは葉に経文を書いたと言われます。

2008.5

ポポー Asimina triloba / バンレイシ科

  • ポポーの花
  • ポポーの花

北アメリカが原産地で、日本には明治の中ごろに導入されました。
高さ10m未満の落葉低木で、葉が出る前に直径3cm位の花が咲きます。花の色は初めは緑色で徐々に紫褐色に変化します。
秋にはアケビ型の果実をつけます。果肉は芳香があり、クリーム状で南国の果物を思わせる味です。ビタミン、ミネラルを豊富に含み、栄養価が高いおいしい果実であるにも関らず、貯蔵性が非常に悪いためなかなか市場には出回ることがありません。

2007.5

ツルニチニチソウ Vinca major / キョウチクトウ科

  • ツルニチニチソウの花
  • ツルニチニチソウの葉の裏側

ツルニチニチソウはグラウンドカバーとして公園などにもよく利用されています。
株元から多数の茎を出し、長いものでは1m以上も茎を伸ばして旺盛に広がっていきます。花が咲くのは主に春ですが、葉は常緑で半日陰でもよく育ちます。
紫の写真は、葉の表皮細胞の一部を染色したものです。

2007.5

フジ Wisteria floribunda / マメ科

  • フジの花
  • フジの花粉

4月の中旬から5月の初めにかけて、観察園の入り口で、目を楽しませてくれます。
日本原産の植物で、舞踊「藤娘」や家紋に図案化されたり馴染みが深い植物です。藤棚の下のベンチで、つかの間の休息はいかがですか?

2006.5

オオイヌノフグリ Veronica persica / ゴマノハグサ科

  • オオイヌノフグリの花
  • オオイヌノフグリの種子(左)オオイヌノフグリの花粉(右)

3月から5月にかけて道端や庭の雑草として、どこにでも咲いているヨーロッパ原産の帰化植物です。
種子の形から名付けたその名に似合わず、花は小さく可憐です。

2月のオオイヌノフグリはこちら

2006.5