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名古屋大学博物館の収蔵品(6)アフリカの考古遺跡の調査記録―写真スライドと石器資料

(2021/01/27掲載)

名古屋大学は半世紀上にわたって、アフリカ大陸におけるフィールド調査に基づく様々な研究を行ってきました。その1つに、人類進化の主な舞台であったアフリカに残された考古遺跡の調査があります。この調査は、1968年に「名古屋大学アフリカ大地溝帯学術調査団」の一環として開始され、調査団の一員であった大参義一氏(当時、文学部考古学研究室助手)の主導により1989年まで合計9回の遺跡調査が行われました。この調査で撮影されたカラー写真スライド約8千枚と、採取された石器資料約50点が名古屋大学博物館に収蔵されています(登録番号 NUM-Lg)。

スライド写真には、調査地の東アフリカ(ケニア、タンザニア、ウガンダ)の遺跡や調査の様子などが撮影されています。オルドヴァイ渓谷といった、人類進化や考古学の教科書でよく登場する著名な遺跡のほか、名古屋大学が調査したムトングウェ遺跡やムウェア北遺跡などにおける発掘の様子が撮影されています(写真1)。

その他、オロルゲサイリエ遺跡やイシミラ遺跡、カリアンドゥシ遺跡は、アフリカの原人が創出した人類最古の定型石器のハンドアックスやクリーヴァーが数多く見つかったことで有名です。それらの石器が足の踏み場もないほどたくさん散布するアフリカならではの光景が写真にとらえられています(写真2)。その石器の一部が採集されて、当館で展示されています(写真3)。

人類進化の主要な舞台であったアフリカでは、世界各国の人類学者・考古学者が石器時代の遺跡調査を行っていますが、そこで生まれる発見は日本でも大きな話題になります。しかし、日本人によるアフリカでの考古学調査はエジプトを除くと限られています。その点で、9 回におよぶ考古学調査がアフリカの、しかも化石人類・石器時代調査の中心ともいえるアフリカ東部において実施されたことはとても貴重で、その記録となる本資料の価値を高めています。

本資料は、過去の研究紹介のために利用できることはもちろん、今後の新たな研究や教育、考古学の一般普及に活用されていくことが望まれます。写真スライドの一部は名古屋大学博物館ウェブサイトの「収蔵資料」において公開されており、スライド資料の詳細は「名古屋大学博物館報告33号」で解説されています。

門脇誠二 (初出:『文部科学教育通信』2018年4月23日号、ジアース教育新社)


写真1 名古屋大学が調査したムトングウェ遺跡(ケニア)での発掘の様子

写真2 アフリカの原人が作った石器(ハンドアックス)が散布するイシミラ遺跡(タンザニア)

写真3 アフリカの考古遺跡に関する展示(名古屋大学博物館)

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