おうちで名大博物館

名古屋大学博物館の収蔵品 名古屋大学における教育研究の記録

(2020/06/15掲載)

名古屋大学では多様な分野の教育研究が行われていますが、その幾つかの記録が当館に収蔵されています。教育研究の記録とは、教育研究の対象となる標本やそのレプリカ、画像のほか、関連文献や教育研究上で残された書類などのことです。

その1つに、植村直己氏による雪の結晶レプリカがあります(図1)。北極点やグリーンランドの犬ゾリ単独行など数々の冒険で有名な植村氏は、冒険の途中で雪や氷、空気中の微粒子の試料採取も行いました。当館収蔵品の雪レプリカは、世界初の北極点犬ぞり単独行とグリーンランド縦断が達成された1978年に、植村氏自身が作成したものです。スライドガラスの上に合成樹脂を塗り、その上に降ってきた雪を受けることによって結晶の形が固定されています。このように作られたスライドガラス試料が、64枚残されています。植村氏は、持ち帰った試料を研究するために、1979年10月から半年間、名古屋大学水圏科学研究所の研究生となり、「北極点・グリーンランド犬橇単独行における学術調査」という論文をまとめました。

医学教育に関わる資料としては、木戸史郎氏による人体組織図があります(図2)。木戸氏は名古屋大学の解剖学教室で技官として勤めながら、画家としての腕を活かし、組織標本の顕微鏡像を水彩画で的確に表現しました。この組織図は、名古屋大学における解剖学教育に利用されただけでなく、戸狩近太郎教授の教科書「組織学」に挿絵として掲載されることにより、全国的な医学教育への貢献となりました。その原画435点が当館に収蔵されています。原画の複製と原画の元となったプレパラートは、現在でも名古屋大学医学部の組織学実習で使用されています。

この他、メダカの研究にもとづく「受精波」と「ホルモンによる性転換」に関する業績で著名な山本時男名古屋大学名誉教授の関連資料も収蔵されています(図3)。山本教授が残した研究ノートのほか蔵書もあります。これらの資料を公開した展覧会「めだかの学校:メダカ先生(山本時男)と名古屋大学のメダカ研究」を2015年に開催しました。その関連図書『めだかの学校―山本時男博士と日本のメダカ研究』宗宮弘明ほか編(2018)も出版されています。

人文科学系の研究記録としては、アフリカの石器時代の遺跡調査記録があるほか、結城陸郎名誉教授の研究した日本中近世史や中世教育史関係の資料もあります。後者には、足利学校に関する資料が含まれ、その他フィルムや人物伝関係、結城名誉教授が関わった政治社会活動の資料類も含まれます。

これらの収蔵資料の一部は名古屋大学博物館ウェブの「収蔵資料」ページにリストや写真が掲載されていますので、是非ご覧ください。

(初出:『文部科学教育通信』2019年1月14日号、ジアース教育新社)


図1 植村直己氏がグリーンランド氷床中央部にて採取した雪の結晶レプリカ

図2 木戸史郎氏による人体組織図(小腸)

図3 山本時男名誉教授によるメダカのスケッチ

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