おもに4つのテーマの研究を行っています。
最近は生態学的研究から分子系統までやりはじめたため、春〜秋は野外で肉体労働、冬は実験室で内職している感じです。
近い種類の生物が、繁殖のとき「まちがって」干渉することによって、結実率や産卵率など、繁殖成功率が下がってしまうことを「繁殖干渉」と呼びます。近縁種による繁殖干渉が、生物の分布を定めるのに深くかかわっている可能性があります。タンポポなど、外来種が在来種を追いやる問題にも、この繁殖干渉が関係していると思われます。
私は、フウロソウ属とタンポポを対象に、この繁殖干渉の植物での実証的研究を進めています。
植物が作る器官の中には、昆虫などほかの生物との相互作用をもつものが知られています。しかし、その中で「ダニ室」の実態は、まだよくわかっていません。ダニ室は、樹木の葉の裏にできる、小さな部屋のような器官です。私は、クスノキやガマズミ属植物を対象に、このダニ室の形態や生態的実態について研究を進めています。
植物標本の中には、同定や分類に重要な形質(おもに花や実)がないため、どのグループに入れていいのかわからないまま放っておかれているものがあります。この「分類の迷子」の家を探すのに、葉のクチクラが重要な形質情報を与えてくれる可能性があります。私は、クスノキ科の植物を対象に、クチクラ形質による「分類の迷子」の家探しを行っています。
クスノキの仲間は、熱帯を中心に2500〜3000種分布しているといわれています。熱帯林の重要な構成要素であり、熱帯の生態に欠かせない存在です。また、アボカド、シナモン、月桂樹、ボルネオ鉄木、樟脳、黒文字など、食べ物・薬品・木材などとして、人の暮らしにも深く関わっている植物です。しかし、採集が難しかったり同定が難しいなどの理由から、分類がまだ進んでいません。私は、アカハダクスノキ属を中心にクスノキ科の分類を進めており、これまでに10種近い新種を記載しています。