◇シルト岩中のシルト粒子:砂粒のサイズとその形についての 例を,マラウィの Karroo 系の試料について,別の例を示しながら,考えてみよう。
左に示した写真は,すでに示したマラウィ湖畔の Livingstonia で坂 幸恭によって採取された
同じシルト岩の写真である。
シルト・サイズの砂粒は,“砂漠の砂”の項で解説したように,また,すでに述べたように,
どこかで一度形成されると,それ以後,大きな形態的な変化はないと考えられる。この事実は,
小さいながら,砂粒の一粒ひと粒から,その由来を推定することができることを意味している。
礫岩の礫種を調べてその起源を推定するように,また,岩石片からその後背地を推定するように,
シルト岩でもそれが出来るかもしれない。
たとえば,左図Aは,双晶をしている斜長石であるが,その外形は双晶の接合面には関係がない。
つまり,外形はそれがもつ劈開面には関係なく,しかも,直線的ではない。おそらく,
この斜長石は火山岩か細粒の半深成岩に由来するものではないか。同じような推論は,
上図Cについても言えるのではないか。これは多分,石英と思われるが,その外形は
不自然な凸凹をしている。この粒子も火山岩起源ではなかろうか。
上図Bと上図Dに示したのはおそらく斜長石と思われるが,それらの外形の一部は直線的である。
また,上図Dでは明らかに下の矢印が示した部分は劈開面に平行である。これらは,おそらく,
その粒内の弱い部分を境にして,より大きなサイズの粒子から割れて形成されてできたことを暗示する。
われわれは普通の倍率で,シルト岩も観察する。それは通常,上左図のように見える。それが 「シルト岩」であるという岩石の名を確かめるための作業であるなら,それで十分であろう。しかし, その中に含まれて数々の手がかりを考えるためには,シルト岩の観察は上右図のような高倍率下での観察 が不可欠であろう。