Mwadui Williamson Diamond Mine のキンバライト
下図は,Williamson Diamond Mine のキンバライトの大型薄片(製作:与語節生)である。 試料の採取者は諏訪兼位。岩石全体の特徴を把握するために,とくに大きな薄片観察が 必要であり,特別に製作された。

◇特徴:キンバライトと称されている岩石は,超塩基性岩質,あるいは, 玄武岩質などの組成をもっているが,その中にダイアモンドを含むということによって 特徴づけられている。

この図からわかるように,いくつかの捕獲岩片や捕獲鉱物を含んでいる。この図では,とくに 目立つ部分を赤い矢印で示したが,それらの捕獲岩片や捕獲鉱物のほとんどはその周辺部が異質な部分に 変っている。これは捕獲された岩石が熱のために,その外側が変質したためであろう。

変質した周辺部は,白っぽいものと黒っぽいものがある。珪長質の岩石片や鉱物の周辺は 白っぽい変質部で囲まれている。一方,苦鉄質の鉱物は黒っぽい物質でその周囲が囲まれている。 つまり,変質作用があったとしても,そのときにあったと推定される物質移動はごくごくその 周辺に限られていたことを物語っている。さらに,変質作用はキンバライトの部分・部分で 顕著に差があることから,それは極めて速く,あるいは,短時間に進んだと思われる。 このキンバライトの組織は,高温の液状のマグマが上昇中に回りの岩石や鉱物などを取り込み, それらを変質しながら,地殻の外に噴出し,急冷された過程を示すと考えられる。

この試料では,中に含まれる外来片は,そのサイズが大小さまざまであり,何らかの作用で サイズがそろえられたというような現象はなかった。また,形も雑多である。それぞれの 外形は,もともと角張っていたと推定できるので,おそらく破壊現象のような作用が深く関係していた といえよう。


さらに詳しく偏光顕微鏡下の特徴をみることにしよう。次の図は,同じ Williamson Diamond Mine のキンバライト薄片の偏光顕微鏡写真である。試料の採取者は矢入憲二。


向って右側は,クロス・ポーラーの偏光顕微鏡写真であり,左側は,単ポーラーの偏光顕微鏡 写真である。

赤の矢印で示した箇所には,すでに述べたように,取り込まれた別の岩石(捕獲岩)片の外側に ある薄い変質した部分が観察される。

左:単ポーラーの拡大図
右:クロス・ポーラーの拡大図

上の指示にしたがって左,または,右をクリックすると,単ポーラーとクロス・ポーラーの写真 それぞれの拡大図が現れる。それらを注意深く観察すると,外側にある薄い変質した部分は ガラス質のように見える。高温のために捕獲された岩片や鉱物片の外側が融解し,その後, 急冷されてガラス化し,その組織がそのまま残っているのであろう。

これらの特徴から,キンバライトは,礫岩のような様相を呈しているが,おそらく火成岩, つまり,マグマが関係している岩石であろうと想像される。その形成過程は,噴出岩に似ている。 それが噴出した時,その周囲や上部にあった別の地層や岩石をこわし,中に取り込んで 来たのであろう。高温であったマグマの影響を受けて,捕獲された外来の物質は一部,変質したり, また,溶融したりした。

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