キンバライトの分布を調べてみると,垂直に近いパイプ状の形をもっていることが 知られている。その形状から,俗称,キンバライト・パイプと言われているが,その大きさは, 直径が数百m,露天掘りされている部分だけでもその深さは数百mに達する。その底部は, もっともっと深いであろう。
想像を含めてキンバライトの断面図を描いてみると左図のようになる (Source : Wikipedia)。
Kimberley ならびに Jagersfontein は,ともに南アフリカにあるダイアモンド鉱山の名である。 それぞれこの深さまで,すなわち,前者では約 1.3 km,後者では約 0.8 km の深さまでキンバライトの 存在が確認されている。
キンバライトは岩石としても,また,その産状からみても,噴出岩に似ている。普通の火山岩に伴って 火山の周辺に分布する凝灰岩(tuff) も火山口をかたどって,円状に分布する。かつて火山口であった 部分を埋めていたと考えられる堆積物も認められている。ダイアモンドは炭素だけからなる鉱物である。したがって,酸素が過剰にあるところでは, ダイアモンドに火をつければ,燃えて二酸化炭素になって,無くなってしまう。実際に, その実験を大衆の前で公開実験をした例もある。
ダイアモンドは化学組成からすれば,石墨と同じである。しかし,結晶構造はまったく違う。ダイアモンドは 極めて高い圧力のもとで形成されたと考えられている。言い換えれば,極めて深いところで 形成されたとされている。もし,ダイアモンドが高温の条件におかれて,その周辺の圧力が 低くなれば,おそらく,その結晶構造は変わってしまうであろう。あの宝石の輝きをもつような緻密な 結晶構造をもったまま,現在の地表で発見されるのは,地下深部から,結晶構造が変化する時間的 余裕を与えないで,おそろしい速さで,地上に達したものではないかと想像されている。
このような考えのもとに,キンバライト・パイプが形成された過程を描いてみると,次のように なる。
(1) 地下の深部でマグマの活動がはじまる。この時期から,少しずつ,周辺の岩石の取り込みは始まる。
(2) マグマの運動が活発になり,周辺の岩石を破壊し,それらを取り込みながら, 上昇がはじまる。環境条件はゆっくりと変り,物質の移動もゆっくり進む。マグマが 地殻の上部を破ったその瞬間,圧力は急激に変化する。
(3) 突然,キンバライトのマグマは爆発する。あたかも,火山爆発と同じように,地殻を 破って上昇し,空気中に多量の物質を放出する。
(4) 噴出された物質は,地上に降り積もる。そこに火山体が形成される。
(5) 山体を構成している火山砕屑性堆積物は,侵食されてなくなるが,その一部は残る。
(6) この過程で出来上がったキンバライト・パイプとその周辺の岩石の中にはダイアモンドの 原石が含まれている。ほとんどのダイアモンド鉱山では,これらのすべての岩石は露天掘りされ, 巨大なダンプカーによって,まるで土砂を運ぶように選鉱場へ運び込まれる。そこでは,自動的に ダイアモンドの原石が分離・選別される。
世界で最大のダイアモンド鉱山は,シベリアのヤクーツク西方約 820km のミールヌイ鉱山であると いわれている。その規模や大きさは高空から撮影した写真によって,ようやく理解することが できるほど巨大である。
解説によれば,ミールヌイとは,ロシア語で鉱山は「平和なる」を意味し,ダイアモンドの 産出によって 1955 年に新しくできた Sakha Republic の街である。 位置は,北緯:62度32分,東経:113度57分。人口は 2002年の調査で,約4万人という。 1955年,キンバライト・パイプを発見したのは Yuri Khabardin, Ekaterina Elagina, Viktor Avdeenko ら の地質学者であった。1957年,Khabardin はそれによって Lenin Prize を受賞されている。 そこには,Sakha (Yakutsk) State University の一部である Mirny Polytechnic Institute がある。
ミールヌイ鉱山の大きさは,直径が約1200m,深さは500mと記されている(Source : Wikipedia)。 キンバライト・パイプを露天掘りして,採掘した原石を大型のダンプカーで運び出すという 方法を続けると,当然,結果として,鉱山は,左の写真からわかるように,上に開いた漏斗状の形態を とるようになる。一方,掘り出された原石,また,選鉱した結果の廃石も莫大な量となる。その 捨て場も計画的に考えられ,市街地の背後に高く積み上げられている様子がわかる。