砂漠の砂を篩で分けて,粒のそろったものを集めて,薄片を作ってみる。
左側の上下の二つの図は one polar,向って右側の上下の二つの図は,cross polars の写真である。
中に示されているスケール・バーに注意するとわかるが,下の左右二枚の図はかなり
大きく拡大されている。
その大きさを同一倍率で示してみると,この差が一目でわかるであろう。サイズの大きな
砂粒(粗粒砂)は丸いが,サイズの小さな砂粒(細粒砂)はカド
張っているのである。
これらの写真はたまたま任意に選ばれた砂粒について,撮影されたものである。しかし,
一般にこの形とサイズとの関係について,もっと数多くの砂粒について検討してみれば,その傾向や
規則性ははっきりするであろう。
そのために,まず,サイズをいくつかのクラスに分けて示すことにしよう。一般にサイズは
いわゆる phi-scale (対数目盛)で示される。この表示方法については慣行になっていて,
あらためて説明する必要はないであろう。
このリビア砂漠の砂については,すでに Mizutani and Suwa (1966) が詳細に記載し,問題点を 論じたが,その一部,とくに“形とサイズ”の関係について,ここであらためて解説することにしよう。
左図は,二種類の測定結果が示されている。
(あ)は横軸に砂粒子のサイズ(phi-scale 表示)をとり,縦軸にはその砂粒子の 円磨度(rho-scale 表示)を表したもので,いくつかの粒子について測定した円磨度の平均値(Mdρ)が 左側の縦座標値で示されている。この関係は図中で黒丸で示されている。
(い)は赤丸で示し,横軸は同じく砂粒子のサイズである。与えられた試料について,あるサイズの
砂粒を多数観察し,その中で表面にくまなく磨りガラス模様が付いている粒子がどれほどあったか,それを
数え,割合(%)を計算してみる。その結果を右側の縦座標を参照して,プロットしたものである。
左図をよくみると,砂粒は Group A と Group B の二つに区分できることが分かる。そのことを
具体的に説明しよう。
もっと極言すれば,“粗粒砂”は丸くてその全表面に磨りガラス模様が付いており,“細粒砂”は カド張っていて,表面には傷がないと表現できる。このような関係は,一つひとつの粒子のサイズと 表面の特徴や円磨度を双眼顕微鏡で観察して,その調査結果を統計的に処理してここに示した図のように 示さなくても,直感的に気づくことである。例えば,Tanner (1956) は,1/10 mm よりも細かい 粒子は丸いものがないことを指摘し,1/10mm, 以下のサイズの砂について,できれば,1/17mm よりも 粗粒の砂粒子についての roundness measure を作ることが望ましいと述べている。Tanner (1956) の指摘や これまで述べてきたリビア砂漠の砂の特徴は,砂の粒子については,サイズとその形成過程に 本質的な関係があることを暗示する。そのことについては,別に項を改めて,議論することにしよう。