中国,USA, NewZealand の砂岩

ここでは,アフリカ大陸以外の砂岩について,解説する。 タンザニア Kigoma の Bukoban 系砂岩に類似する例として,中国の南京湯山の デボン紀砂岩(fine-grained quartzoze sandstone),ならびに,アメリカ合衆国 アパラチア山系のシルル紀 Tuscarora 砂岩(medium-grained quartzose sandstone)を示す。 一方,これらとは異なった,日本のような変動帯の砂岩として,ニュージーランドのジュラ紀砂岩(fine-grained graywacke sandstone) を示す。


◇南京湯山の石英質砂岩:中国,南京東方の湯山には, この地域を代表する古生代から中生代の地層が分布する。その層序と化石の研究は古くから行われて いて,カンブリア紀・オルドビス紀・シルル紀・デボン紀・石炭紀・二畳紀・三畳紀の 地層の標準層序ともなっている。これらは褶曲構造を作っているが,本来は,安定大陸である剛塊の 上に順次,堆積したものである。これらの地層の間に著しい傾斜不整合がないということは, 長期間にわたって,この地域一帯が安定した大陸であったということを示している。
デボン紀の砂岩は左の写真が示すように石英を主構成物とする淘汰のよい砂岩である。それ自身が 石英粒子からなるばかりでなく,粒子の間をうめて,珪酸が沈殿している。それらは 石英粒子の結晶構造を使って二次成長していて,その部分では,光学的には石英と区別できない。ただ, 砕屑粒子との境目で,それが二次的なものであるかどうかが判別できる。
この砂岩は,風化に対して抵抗があり,しかも,ところによってはその傾斜が垂直に近いので, 露頭では連続した小さな峰をつくって走行方向に連らなっている。









◇アパラチアの Tuscarora砂岩:アメリカ合衆国の東部には, 古生代にいわゆるアパラチア“地向斜”と呼ばれた巨大な堆積地域が発達した。 プレート・テクトニクスの立場から見直すと,この“地向斜”地域は 安定した基盤の上の広大な堆積域であって,現在考えられて いるプレートの収束帯や大規模な横ズレ変位をともなうプレート境界の変動帯ではない。 その地史的な経過をみると,むしろ,ヨーロッパのジュラ山系,カナディアン・ロッキーなどに似たいわゆる foreland fold and thrust belt であると考えられる。
アパラチア系は,その南を,現在, ミシシッピ河で切断されているが,南西方にはその延長部があると考えられている。 すなわち,テキサスのマラソン盆地のカバヨス・ノバキュライトやアーカンソー・ノバキュライト 等によって知られているウォシャトウ系に連続するとされている。マラソン盆地では, 基盤(先カンブリア系?)の上に,下部古生界から上部古生界にかけての 地層が順次重なり,これらが一緒にまとまって褶曲構造を形成している。この構造は, いわゆるアパラチア系の褶曲構造と規模においても,形態においても,よく似て居る。
Tuscarora 砂岩は風化に対して抵抗力があって,Sasquehana River が Harrisburg 付近でこの地層を 横切るところでは,あたかも堰のように川中に転々と断続した露頭が並んでいる。

上に示した2つの例は,砂岩の顕微鏡下の特徴が似ていると同時に,それが形成された 堆積環境もよく似ている。幾何学的な形態も,南京湯山の褶曲構造とアパラチアのそれとは似ている。 ただ残念ながら,タンザニアの Kigoma 付近に出る Bukoban 系の 地質構造は形成時期が古いため,その形態を明らかにすることは出来ない。しかし,Kigoma 付近の 砂岩は,いずれも安定した剛塊性の基盤の上で,風化と運搬とをくりかえした末に,堆積した砂岩で あろうと考えられる。
巨視的に見たとき,テクトニックな地史と砂岩の特徴には深い関係があるとはじめて 指摘したのは,Paul D. Krynine であった。彼の基本的なモデルになっていた変動は, いわゆる“地向斜モデル”であり,それに基づく造山サイクルであった。今,彼と同じ議論をすると すれば,基本的な考えは,プレート・テクトニクスであり,ウィルソン・サイクルであろう。 砂岩について考え,堆積環境とその後の変形作用との2点から整理すると,砂岩の仲間は,広大な基盤の上に 長い間かかってゆっくり堆積した quartzose sandstoene とプレートの収束域に短時間の間に急速に堆積 した graywacke sandsteone とに分けることができよう。前者は,いわゆるstratigraphic terrane を構成し,後者では,堆積作用につづく変形作用のために,その層状的な重畳構造が乱されてしまっ た melange terrane をくつる。

先に,プレートの収束帯の例として,日本の秩父帯や四万十帯の砂岩を示した。他の地域の 例として,次に,南半球のニュージーランドの例を挙げることにする。

◇ニュージーランドの砂岩:North Island の いわゆるWaipapa Terrane の砂岩。ノートのメモには,“sandstone overlying conformably green-argillite”とある。
オーストラリア大陸とニュージーランドの関係は,大きく見ると,アジア大陸と日本列島に 似ている。ニュージーランドの東側は西側に向って沈み込んだ地域と考えられていて, そこにはやはり melange terrane の一つ,Waipapa terrane がある。そこで 採取された砂岩は,記載にあるように,green-argillite を覆っている砂岩で,この argillite とあるのはおそらく凝灰岩質頁岩であろう。このような岩石の組み合わせ自体が 堆積環境を特徴づけている。顕微鏡写真を一見すれば明らかなように,この砂岩は,きわめて淘汰の 悪い大小さまざまの,カド張った,種々の鉱物・岩石の砂粒からなる graywacke sandstone で ある。


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