Research Outline

Research Field 01

ニュージーランド南島モエラキボールダー

約5000万年前の地層から産出。内部から鯨の頭部の化石が発見されています。

球状コンクリーションとは、地層(堆積岩)中の砕屑粒子(砂や泥)の隙間が鉱物で充填され、非常に緻密で硬くなっている球状の岩塊のことです。多くの場合、炭酸カルシウム(鉱物は主に方解石(カルサイト))で充填されることが多く、その内部に化石などの保存良好な生物の痕跡を内包します。その成因についてこれまで諸説ありましたが、内包される生物起源の炭素成分と、海水中のカルシウムイオンとの急速な沈殿反応で形成されることが明らかとなりました。

(Yoshida et al.,2015;2018a;2019)

画像:砂モグリコンクリーション
砂モグリコンクリーション

(愛知/師崎)

画像:カニコンクリーション
カニコンクリーション ニュージーランド

(瑞浪化石博物館 所蔵)

コンクリーション成長モデルと
ツノガイ

球状コンクリーションの形成メカニズムを解くきっかけとなったツノガイコンクリーション。約1600万年前の地層から産出されます。ツノガイの死後、腐食に伴い口の部分から溶出する炭素成分と空隙水中のカルシウムイオンと反応しつつ、風船が膨らむように丸く成長します。ツノガイコンクリーションの場合、形成速度は数週間〜数ヶ月です。

(Yoshida et al.,2015)

画像:ツノガイ
画像:ツノガイ

火星の球状コンクリーション

球状鉄コンクリーションが、火星の地表を覆う地層(堆積岩)中からも2004年にNASAの火星探査機によって発見されました。 大きさは、地球のものよりも小さく、形と色から‘ブルーベリー’という愛称で呼ばれています。

アメリカ/ユタ州の
球状鉄コンクリーション

火星で発見された鉄コンクリーションの形成メカニズムを解き明かす鍵となりました。

  • STAGE1

    炭酸カルシウムコンクリーションの生成

  • STAGE2

    酸性地下水によるリーチング

  • STAGE3

    鉄コンクリーションの形成

球状鉄コンクリーションの成因

球状鉄コンクリーションの成因については、発見以来、約20年近く議論が続いていましたが、炭酸カルシウムなどの炭酸塩のコンクリーションが素となって、その表面を鉄が覆うことで形成されることが明らかとなりました。

(Yoshida et al.,2018b)

地下処分ピット(拡大図)

地層処分:地下300mよりも深い地下環境に放射性廃棄物を数万年以上、隔離する方法。人工的なバリア材も使用しますが、最終的には地質環境の隔離機能が重要となります。

球状コンクリーションに学ぶ

球状コンクリーションは、短期間で形成され、内包する化石(生物痕)を長期に渡って風化や変質作用から守る‘バリア’として機能することが分かってきました。 この仕組みを、リニア新幹線などの長大トンネルなどの地下構造物の劣化防止技術として、さらには数万年以上に渡って地下で隔離することが求められる放射性廃棄物の地下処分に応用するため、現在コンクリーション化の技術開発を進めています。

近未来社出版
「球状コンクリーションの科学」吉田英一 著

世界各地の球状コンクリーション

球状コンクリーションは、世界中の地層から発見されています。
名古屋大学のメンバーを中心とした、コンクリーション研究グループ(NUCON)で、
調査を展開しています。

Research Field 02-1

酸化還元反応と物質移動

地球表層は、大気中の酸素と反応することによって酸化します。一方、岩石中は還元状態を維持しています。この酸化と還元との狭間で、様々な元素が移動します。その中でも鉄イオンは、酸化還元によって色の変化も顕著で、分かりやすい元素です。その現象のいくつかを紹介します。

画像:年輪状の鉄酸化物フロント

岩石(火成岩)中に鉄を含む地下水の浸透で形成された年輪状の鉄酸化物フロント(リーゼガング状パターン)。この鉄バンドの幅から形成にかかる時間を読み取ることができます。

画像:高師小僧

地帯の粘土層中に形成される高師小僧。湿地帯の粘土層中に生えた葦類の根っこ部分に、形成される大きさ数センチほどの酸化鉄の塊です。

画像:岩石中に形成された鉄のバンド模様

岩石中に形成された鉄のバンド模様。これも地下水中に溶解した鉄イオンが岩石中を移動中に形成させる模様です

画像:堆積岩中のウランの移動と濃集

堆積岩中のウランの移動と濃集。 岩石中には、ウランが含まれています。ウランは、酸化すると地下水に溶けやすくなり、還元状態で沈殿します。その様子は、日本に数少ないウラン鉱床中のウランの濃集状態から知ることができます。

Research Field 02-2

元素が移動する移動経路(割れ目の性状、成因などに関する研究)

元素の移動経路(割れ目の性状、成因などに関する)研究:岩石には必ず地下水に溶解した元素が移動する割れ目などの水みちが存在します。その形成メカニズムは、岩石の種類によって異なります。 そのいくつかの研究例をここでは紹介します。

画像:深成岩

花崗岩のような、深成岩は地下数キロよりも深い地下内部でマグマがゆっくりと冷えつつ形成される岩石です。その形成過程で、大小様々な割れ目が生じます。その割れ目は、地下水を循環させ、そして割れ目充填鉱物を生じさせます。そのプロセスを理解することは、地下環境の利用にとっては必須の課題です。

画像:四万十層群の泥岩中に形成された割れ目とその充填鉱物

四万十層群の泥岩中に形成された割れ目とその充填鉱物。炭酸カルシウムと酸化鉄が混在する形で割れ目が充填されています。この充填状態を知ることで、堆積岩がどのような堆積環境を経てきたのかを知ることができます。

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